トランプ大統領の暴走を止める「日本の秘策」 「日米新経済協議」の肝は「ババ抜き」にある?

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時は流れ、今では系列取引もすっかり昔のことになった。そもそも三井銀行と住友銀行が合併しちゃったわけだし、今では当時の6大グループを全部言える人がどれだけいることか。

芙蓉グループなんて、今の若い人は知らないだろうなあ。日産自動車にカルロス・ゴーンさんがやってきたときに、最初に手掛けたのが系列取引の合理化だった。もちろん、系列会社から他の所よりも高い値段で部品を買う、なんてことも今じゃ「あり得ない」行為となった。この25年ほどで、日本企業もずいぶん変化したのである。

「バッシングを受ける筋合いはない」はずだが…

で、何が言いたいかというと、日米通商摩擦にはいろんな局面があったけれども、今ほど日本側に「後ろめたい」ことがない時期は、過去になかった、ということである。

今の日本は「集中豪雨的な輸出」で「黒字を溜めこむ」こともないし、「為替誘導で輸出競争力を高めている」わけでもない。貿易収支はつい2015年までは赤字が続いていたし、2012年までは超円高で苦しんでいた。今でも対米貿易は黒字だが、対中貿易や対欧州貿易は赤字である。そして自動車会社などはアメリカ市場に工場を建設して、雇用を創出し、良い製品を作り、よき企業市民となり、納税や社会貢献をしている。これでバッシングを受けるのでは、たまったものではない。

ところがアメリカのトランプ大統領の対日認識は、どうやら1980年代辺りで止まったままで、今でも「ズルをして豊かになった国」と思っているらしい。今の日本経済は、昔ほど元気ではなくなっているし、かなり普通の資本主義に近づいていると思うのだが。

そこへわれらが安倍晋三首相は、2月10日にワシントンへ乗り込んでいく。日米首脳会談で、経済・通商面がどうなるかが心配である。安全保障面では、ジェームズ・マティス国防長官が、議会承認を得た直後に韓国と日本に飛んできて、「うちのボスが変なことを言うかもしれないけど、実務面は俺がちゃんと仕切ってやるからな」と仁義を切ってくれた。尖閣諸島の防衛義務も確認できたし、駐留経費の問題も適切だということになった。とりあえずこちらは一安心である。

一方で、スティーブン・ムニューチン財務長官やウィルバー・ロス商務長官は、まだ議会承認が済んでいない。こんな状態でトップ同士が会って、アメリカ車をもっと買えだの、日米FTAをやろうだの、円安がケシカランとか言われ放題になったらどうしよう。しかも安倍さんの頭の中は、フロリダでのゴルフで一杯かもしれない。

次ページ日本政府の「秘策」は、今後世界の手本になる?
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