東電、「想定外」「予見不可能」を16連発 原発事故裁判で、責任回避の答弁に終始

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国や東電が不作為を否定する理由

東電の首脳は6月26日の株主総会で次のように述べている。

「事故前の津波対策については、知見が十分とは言えない津波に対して、想定を上回る津波が来る可能性は低いと判断し、自ら対策を考え、迅速に深層防護の備えを行う姿勢が足りなかった」(内藤義博副社長)。

「福島第一原発の事故に際しては、深く反省すべきところがあった。人智を尽くして事前の備えをしていれば、この災害は防げたのではないかという質問に対して、防げたのではないか、これがわれわれの考えであります」(相澤善吾副社長)。

このように東電は事故を防げなかったことに「深い反省」を述べる一方、事故をいまだに「想定外」とすることで不作為や重過失をきっぱりと否定している。不作為や重過失があったと認めた場合、原子力損害賠償法の無過失責任原則に基づく現在のルールは根底から見直しを迫られるとともに、賠償額は従来と比べても大幅に膨らむことが必至だからだ。原発の稼働にも支障が出かねない。

国と東電の責任を正面から問う今回の裁判は、9月10日に次回期日が予定されている。国や東電の反論の中身や根拠が注目される。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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