東電、「想定外」「予見不可能」を16連発 原発事故裁判で、責任回避の答弁に終始

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しかし、重大事故が起こる可能性について「02年または遅くとも06年には認識していた」とする原告の指摘に対して、東電は「予見できなかった」と答弁書で反論。前出の勉強会でのやりとりについても「一定の想定外津波が発生するとの仮定に立って、『あくまで仮定という位置づけで』プラントの耐力という施設面にかかわる技術的検討を実施したもの(に過ぎない)」と抗弁した。

要は、東日本大震災のような巨大地震はまったくの想定外であり、対策を怠った事実はないというのが東電の主張だ。東電の答弁書では、「予見できなかった」「想定外」などの言葉が16度も繰り返されている。

「東電に津波対策実施を命じるなどの規制権限を行使しなかったのは違法だ」として住民が国の責任を追及したのに対して、国側も責任の所在を真っ向から否定している。

原告が過去の公害裁判の判決から導き出した「平穏生活権」についても、今回の事故で「権利の根拠となるものではない」などと答弁書で述べている。

国、東電の主張は予想されていたものとはいえ、その姿勢はきわめてかたくなだ。ただ、自らの反論についての具体的な根拠は示していない。原告が「国の責任」とする多くの論点について、認めるか否かについて述べなかったことから、裁判所は次回の裁判期日までに見解を示すように国に指示している。

次ページ次回公判での、国や東電の反論に注目
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