トランプに投票の元日本人が見た米国の変化 「約束された明日」はなくなった

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トランプ大統領を支持するのはどんな人たちなのか(写真:Shannon Stapleton/ロイター)
米国ドナルド・トランプ大統領の言動に世界が揺れている。就任後、環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱や、移民・難民の入国制限など矢継ぎ早に大統領令を発令し、波紋を呼んでいる。
いったいどんな人がトランプに投票したのか――。これまでのトランプ大統領の言動を見るとそう思わずにはいられないが、実はトランプ大統領に投票した元日本人の女性がいる。2010年に渡米し、その後帰化したジュンコ・グッドイヤー氏だ。日本で知り合った米政府職員の妻として米国に渡った同氏は、夫に付き添って移住した米国各地で悲惨な現実を目の当たりにする。そこで見たのは、一生懸命働いているのに保険料が払えなくなったり、仕事にあぶれたりしてしまう「普通」の人たちの転落劇だ。
米国が「トランプ支持」に傾いていく過程にはどんなことがあったのか。グッドイヤー氏による新著『アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由』には、大統領選挙時から物議を醸し続けているトランプ大統領に1票を投じるしかなかった「隠れトランプ」の苦悩の選択と、「トランプ支持者対反トランプ」という単純な構図では語れない今の複雑な米国の姿がつづられている。今回は、そこから序章を転載する。

日本では経営者だった

「狂気になれ」――これは、私が日本で会社を経営していた時代に、人生の大先輩が贈ってくれた言葉だ。2016年11月8日、アメリカ合衆国大統領選挙投票日。第45代アメリカ大統領が誰になるかを見守る間、ずっとこの言葉が私の心にこだましていた。

私は2013年の終わりから、ワシントン州シアトルの近郊に住み、アメリカで会社を経営している。それまでは東京のど真ん中で暮らし、そこでも会社を数社経営していた。初めて独立したのは20代半ば。30代は夢のように過ぎていき、手掛けたいくつかの事業は、とてもうまくいった。

当時まだ日本に上陸していなかった「ピラティス」というエクササイズをアメリカの大学と提携して日本に広めたり、自分の会社に所属させていた音楽家や作家、トップ・アスリートなどを世に送り出し、国内外の大きな舞台やイベントなどに出演させるような事業は、手掛けた多くの仕事の中でも特に楽しいものであった。

もちろん失敗もたくさんした。人知れず眠れぬ夜を過ごすことなども、珍しいことではなかったし、部下からの信頼を失って苦しくなったこともあるが、会社や仕事をやめたいと思ったことは一度もなかった。

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