トランプは世界最強ナルシストかもしれない 何が彼を突き動かしているのか

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アメリカ人だから普通、ということではなく、ここまで厚顔無恥に自画自賛する人はそうそういない。とにかく「自分が好きで仕方ない」。だからメディアの関心を集めることに血道を上げ、自分が表紙になった無数の雑誌をオフィスの机の上や壁中に飾り、悦に入っている。

2015年9月、そんな姿をとらえたCBSテレビの取材陣に対し、トランプはこう答えている。「私はとにかくたくさんの雑誌の表紙になっている。たぶん、どんなスーパーモデルよりも多いね。でもそれは、人々が私のことを尊敬している、ということなんだ」。

精神疾患?

これを少々度の過ぎたナルシストととらえることもできるかもしれない。しかし、こうした過度の「自己愛」こそが、彼を規定する根本的な精神疾患であると、アメリカの多くの精神科医や心理学者が指摘している。そもそも、アメリカでは、心理学者や医師が、自分が直接、診察をせずに公の人物について診断をし、メディアに話してはいけないという「ゴールドウォータールール」というものがある。

そうしたルールを破って、ハーバード・メディカル・スクール、カリフォルニア大学の教授ほか、数々の専門家が声を上げ始めたのだ。もちろん、主治医以外は誰も、確定診断は出せないわけだが、もし仮に、こうした傾向を彼が持っているとすれば、実に多くの言動に極めて明快に説明がつく。

「アメリカ精神医学会の分類と診断の手引き」によれば、自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personal Disorder)と呼ばれる精神疾患の診断基準は以下のとおりだ。このうち5つ以上当てはまれば、その可能性が高いとされる。

1. 自己の重要性に関する誇大な感覚(自分の実績や人格を誇張し、優れていると認められることを期待する)。

2. 限りない成功や権力欲にとりつかれている。

3. 自分が「特別」であり、「独特」であり、「特別な地位の高い人々や組織だけに理解される」と信じている。

4. 過剰な称賛を求める。

5. 特権を持っていると感じている。つまり、特別に有利な取り計らいを受けたり、自分の期待が自動的にかなえられることを期待する。

6. 対人関係で相手を不当に利用する。自分の目的をかなえるために、他人を利用する。

7. 共感の欠如。他人の気持ちや欲求を認識しない。

8. しばしば他人に嫉妬する。もしくは、他人が自分に嫉妬していると思い込む。

9. 尊大で傲慢な行動、態度。

ナルシシズムは、持って生まれ、死ぬまで変えることのできないアイデンティティであり、他人にとっては付き合うのは非常に難しいタイプだ。羞恥心や罪の意識がなく、すべてにおいて自己中心的。特に、ナルシシズムに反社会的人格障害、攻撃性、サディズムが合わさった「悪質性ナルシシズム」と呼ぶ状態になると、誇大化、衝動性、批判に対する過剰反応、現実と虚構が見分けられない、ルールに対するモラルが低いなどの気質を呈してくる。

次ページ批判に対する耐性の驚くべき低さ
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