生保レディの囲い込みへ、日本生命が「秘策」 1日3時間半の勤務で育児や介護と両立

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かつて生保業界では、営業職員のターンオーバー(大量採用大量離脱)が大きな問題だった。しかしここ数年、大手生保各社は基本給部分のアップや入社前後の教育・研修体制を拡充し、特に入社1~3年目の定着率は改善した。他方で勤続10年を超えるようなベテラン営業職員には、客の都合に合わせて休日出勤したり、振り替え休日さえなかなか取れなかったりという現実もある。勤続年数が長くなると歩合給部分の割合が増え、営業成績で給与が決まるようになるためだ。

営業職員1人で契約者約200人を担当

新制度導入には、生保会社にとって少子高齢化が進む中で、営業職員の希望者が減少し、採用が難しくなってきたことも背景にある。一般的には営業職員1人当たりで平均200人ほどの契約者を担当する(都市部と地方、経験年数などによって違う)。日生の場合、契約者は約1000万人。訪問活動などアフターフォローを考えれば、約5万人の営業職員は確保したいところだ。

さらに営業職員の「高齢化」も進んでいる。日生も含め、大手4社の営業職員の平均年齢は45歳から49歳だが、じわじわと上昇傾向にある。長く働いてもらうことも重要だが、優秀な人材を引き留め、新しい人材も確保しなければ、営業力が弱体化しかねない。

日生は「働き方の選択肢を広げ、働きやすい環境作り」を新制度導入の第一の目的として挙げる。特に大手生保の間で人材の取り合いとなっている実態を考えると、今回の新制度が採用面でどれだけの効果を出せるのかにも注目される。

他の大手生保各社はとりあえず静観の構えだが、政府が「働き方改革」を後押ししていることもある。4月以降、各社もこうした営業職員制度改革に動くことになるだろう。
 

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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