「道の駅」来場55万人!新幹線で変わる木古内 人口減少や高齢化が進む地域の可能性

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木古内町は人口約4400人、高齢化率は43%超。何をするにしても、地元だけでは人手・若手が絶対的に足りない。新幹線や、新幹線が引き起こしつつある人の流れと意識の変化を、「持続可能な地域づくり」にどうつなげるか―――。

町の施策について、現状と課題をうかがおうと、まちづくり新幹線課の丹野正樹・新幹線振興室長を訪ねた。

「開業に際して、さまざまなイベントやプロモーションを展開してきた。道の駅の年間利用者数55万人は、以前の町内全体の観光入込客数と比べて約10倍です。道の駅だけでも約20人の雇用につながっている。もちろん、この水準を維持するのは困難なので、減り方をどれだけ緩やかにするか。一方で、定住人口の維持・確保につながる取り組みも模索しています。イベントを展開したところで、交流人口は増えても定住人口は増えない。病院や介護老人保健施設が駅前の中心市街地に立地している利点を生かし、また、函館江差自動車道・木古内インターチェンジの2019年度開通を見据えて、10年後、20年後をにらんだ、新幹線開業を契機としたまちづくりを進めていく必要がある」

インバウンド対策はマンパワーに課題

当面、力を入れていくのがインバウンド対策だという。人口減少に伴い、国内の観光需要が否応なく減少に向かう中で、閑散期対策、さらには観光産業の意識改革とボトムアップを目指している。

町は、観光庁の助成を受けて、駅前一帯への公衆無線LAN整備に着手する一方、2016年春の大型連休中に、外国人観光客の動線をアンケートで調べた。その結果、富裕層とみられる、地元に友人や親類がいる人々は、函館-木古内-松前と車で移動する傾向があったのに対し、JRグループが提供する「ジャパン・レール・パス」の利用者は、比較的安い路線バスを利用する傾向が判明したという。

広域的には、観光コンシェルジュ・浅見さんの提言を受けて、近隣8町とともに「日本人にも外国人にも分かりやすい地図」を作ることになり、北海道観光振興機構の事業を活用して、制作が進んでいる。作業を通じて、特に路線バス利用者にとってのコインロッカー・一時荷物預かり場所の情報の重要性などが、あらためて浮かび上がったという。また、観光ガイドと通訳案内士をセットにした、外国人対象のモニターバスツアーを展開している。

「地元でインバウンド対策に濃淡がある中、さまざまな取り組みを通じて『外国人対応は無理』と言っていた人たちの意識が変わってきた。9町の協議会で話し合ううち、次に取り組むべき課題が次々に見えて、それを解決していけば着実に観光のレベルが上がっていく形になっている。松前町や江差町が牽引役です。ただ、あらゆるところでマンパワーの問題が大きい。例えば観光ガイドの数が足りない。きちんと有料化でき、さらには互いに隣の町の観光スポットを説明できるようなクオリティのガイド養成も必要です」

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