「スカウトでアルバイト採用」は定着するか 人手不足でも「採用弱者」が負けない方法

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いわゆる専門職や幹部候補のような高度人材以外の人に対しても「スカウト」という形で事業者からアプローチが来る文化が根付くことは、「働くこと」のイメージにも大きな影響を与えるのではないだろうか。

これまでは、一般的な求職者は「選考を受けて事業者主体で選ばれる」という選択肢しかなかった。人手不足で確実に求職者の立場が強くなっているのに、それに気づいていない人はまだ多い。待っていても相手から求められるという状況が可視化されれば、労働市場の自由競争化を後押しすることになるだろう。

「ブラックバイト」の解消にもつながるか

また、主婦に限らず、学生が巻き込まれやすい、条件が劣悪ないわゆる「ブラックバイト」の解消にもつながる可能性がある。竹内氏は、「問題だと思うのは、一度決めたらここで働かないといけないという思い込みを持っている人が多いこと。今働いている職場も、100個の選択肢のうちの1個であれば思考の幅も広がる」と話す。

「人間が追い込まれるのは、選択肢や可能性がなくなった瞬間。『スカウト』機能によってコミュニケーションが起きれば、採用マーケットにおいて人材の流動性が高まる。そうすると、企業をさらに『employee satisfaction(従業員満足度)』の改善に向かわせることになるのではないか。この点がうまくいかないとビジネス自体が成り立たない、という環境ができれば良いと思う」(同)

2019年末までに、求職者向けの「スタンバイ」はアプリのみで100万ユーザー、事業者向けの「スタンバイ・カンパニー」では導入数20万を目指すという。「採用弱者」といわれる地方の中小企業などは、これまで求職者にアプローチするすべがなかったが、事業者にとっても選択肢が広がることになるだろう。

ただ、中小企業の多くは採用ノウハウに乏しく、能動的にアプローチする機能を使いこなせるかは課題が残る。積極的に応募してくる人から選ぶほうが効率がよいと考える事業者も少なくないため、こうした意識を変えられるかが、サービス成長の肝になりそうだ。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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