ジャパネット髙田明「私が引退を決めたワケ」 若手の「熱意と粘り」が本当に嬉しかった

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このチャレンジデーは、2013年の過去最高益更新にも大きく貢献してくれました。そのおかげで、背水の陣を敷いていた私も、このときは「社長退任」することはありませんでした。

「確信」が揺らぎ、社長退任を決断

少し尊大に聞こえるかもしれませんが、それまでの私は、自分の決断は100%正しいと確信してやってきました。トップに迷いがあると経営はうまくいきません。しかし、チャレンジデーは私の確信を揺るがすことになりました。100%だった確信が、20~30%は減って70~80%になってしまいました。若い人の違った意見のほうが、結果を生み出す原動力になることもあると思ったのです。

この揺らぎが、その後の社長退任の決断に影響したのは間違いありません。

でも、うれしかったんです。本当にうれしく思いました。社員のその姿勢、攻めの気持ち、私に反対されてもあきらめない熱意と粘り、それがジャパネットの新しい時代を作っていくと確信しました。これは100%ですよ。

2015年1月16日、社長交代。長男旭人氏が新社長に就任(写真提供:ジャパネットたかた)

こうして、私は2012年末に「社長退任」宣言をしてから3年目の2015年1月に社長を退任しました。後継社長には長男の旭人を指名し、ジャパネットたかたを委ねることにしました。

企業は創業期、成長期、安定期それぞれで、組織のあり方もリーダーシップも変わっていかなければ、100年続く企業にはなれないと思ったことも、若手にバトンを渡した理由でした。

私は、経営者としては何でも感性で突き進んできたタイプです。私自身は、私が感性でやってきた経営や課題の解決方法を「仕組み化」することがなかなかできていませんでした。会社の仕組みを作ったり、人を採用して教育制度や評価制度を作ったりすることは、新社長のほうが長けていると思います。

退任を公言したとき、会長職として残るという選択肢もあったかもしれませんが、私はその道は選びませんでした。指揮命令系統が二重構造になっては社員が困る、経営者としての権限を譲るなら、全部譲るほうがいいと思いました。

そうして社長退任後の1年間だけはテレビショッピング番組の制作指導とテレビ出演を続け、私なりに考え続けてきた「伝えること」をスタッフに受け継がせ、共有する期間としました。

そうして2016年1月にはテレビショッピングからも「引退」し、今は自由の身を謳歌しています。

髙田 明 ジャパネットたかた創業者、A and Live代表取締役、V・ファーレン長崎代表取締役社長

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たかた あきら / AKIRA Takata

1948年長崎県平戸市生まれ。大阪経済大学卒業。阪村機械製作所に入社、入社2年目からヨーロッパに駐在し、機械営業の通訳に従事。74年平戸へUターンし、父親が経営していた「カメラのたかた」に入社。観光写真撮影販売から事業拡大し、86年に分離独立して株式会社たかたを設立、代表取締役に就任。90年からラジオショッピング、94年にはテレビショッピングに参入し、通信販売事業を本格的に展開。99年ジャパネットたかたに社名変更。2011、12年はテレビの販売不振で2期連続減収減益。2013年は、自らの進退を懸けて過去最高益更新の目標を掲げる。テレビに代わる商材の発掘、東京オフィス開設等々が奏功し、目標を達成。2015年1月、ジャパネットたかた社長の座を長男に譲り退任。同時にA and Liveを設立。2016年1月にはMCとしての番組出演も「卒業」。2017年サッカーJ2クラブチーム、V・ファーレン長崎代表取締役社長に就任。クラブの立て直し、再建に注力。2017年11月にJ1昇格を達成したが、2018年はJ2に降格。今季J1復帰を目指して奮闘中。

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