日産が「EVへの投資積極化」を宣言した理由  ゴーン社長「われわれはEVのリーダーだ」

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ノートはHVの一種だが、電気モーターだけで駆動するため「充電不要のEV」として売り出された。発売直後の11月は国内の新車販売で、ここ数年1、2位の常連であるトヨタHVの「プリウス」と「アクア」を抜き、1位に躍り出た。12月はプリウスに再びトップを奪われたが、2位につけた。

坂本副社長は今後、「HVで出してきた車のほとんどはe―POWERでカバーしていきたい」と話す。新型ノートのモーターとインバーターはリーフと共通で、e―POWERとEVとは「ビジネス的にはシステムのかなりの部分を共用できる」として量産効果を見込む。乗り味もEVと同様で、「EVの普及にも貢献できる」とみている。

海外ではEVやプラグインハイブリッド車志向が強まっている。最大市場の中国も補助金などでEV普及を強力に推進。ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れた独フォルクスワーゲン<VOWG_p.DE>など欧州勢もEVへのシフトを鮮明にしつつある。これまでHVを推してきたトヨタもEVをもはや軽視できず、昨年12月に社長直轄の組織を設置、これまで慎重だったEVの開発や量産化に向けて動き始めた。

EV販売で先頭を走ってきた日産にとって、こうした業界の流れはチャンスとも言えるが、EV市場での戦いはまさにこれから。ゴーン氏も「どれだけ早く大きな存在感を示せるかが唯一の問題だ」と気を引き締める。

HVを順次e―POWERに切り替えても大きな効果は見込みにくい。16年3月期では、トヨタのHVが世界販売の約12%を占めるのに対し、日産は世界販売約540万台のうち、HVは約9万5000台と2%にも満たない。一方、EV市場では、米ゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>が「シボレー・ボルト」を発売するなどライバルが増え、競争は厳しくなっている。

不穏なトランプ政策

トランプ米大統領の政策も懸念材料だ。同大統領は地球温暖化に懐疑的で、米国の大手自動車メーカーや石油会社にとって「障害」となる環境規制の緩和を進める考えだ。まだ具体的な政策は判明していないが、日産は「従来通りエネルギー省など関連当局と深い議論を継続し、貢献したい」(坂本副社長)としている。

こうした中、ホンダ<7267.T>が米国を世界最大の燃料電池車(FCV)市場と位置付け、FCVの基幹部品をGMと米国で共同生産することを決めた。大統領の経済助言チームの一員として、EVベンチャー、テスラ・モーターズ<TSLA.O>の最高経営責任者、イーロン・マスク氏が名を連ねている。これらの動きは日産にとって吉か凶か。米国市場の風向き次第では、日産のEV戦略にも影響が及ぶ可能性がある。

 

(白木真紀、田実直美 編集:北松克朗)

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