もの申す脚本家が「恋妻家宮本」に込めた思い 「家政婦のミタ」遊川和彦が映画監督デビュー

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――まさに正しさより優しさですね。

俺が優しいかどうかは別として(笑)。愛はあると思ってやっているんだけど、その愛が伝わらないのかもしれないなぁ。それでも頑張るしかないですね。

――今回、映画の監督をやってみて、ドラマの違いは感じましたか。

テレビのほうは時間や予算が限られていますが、映画がこんなに余裕があるのかと思ったのが大きかったですね。それから監督って大事にされるんだなとも思いました。

新たなチャレンジをすると創作意欲が湧く

遊川和彦(ゆかわかずひこ)/ 1955年生まれ。テレビ制作会社ディレクターを経て、1987年に「うちの子にかぎって…スペシャルII」で脚本家としてデビュー。2005年に「女王の教室」の脚本を手掛け、第24回向田邦子賞を獲得。2011年の「家政婦のミタ」は、最終回でドラマ史上歴代5位タイ(放送当時は3位タイ)となる平均視聴率40%を記録。この作品で東京ドラマアウォードの脚本賞を受賞した。代表策に「ADブギ」「GTO」「曲げられない女」「さとうきび畑の唄」「純と愛」「○○妻」「偽装の夫婦」「はじめまして、愛しています。」など

――テレビの世界でも脚本家は大事にされるのではないでしょうか。

確かに大事にはされるんですが、現場に行くと「なんで先生がいるのかな?」という感じで疎まれます(笑)。でも、監督だと現場にいてもみんな温かい目で見てくれますので、とても助かりました。ただ、テレビにしても映画にしても、自分を高めていくことが大事ですね。今は、スタンリー・キューブリックや黒澤明みたいな人はいないので、普通の人間が一生懸命学びながら、いいものを作ろうと努力する。それを一生懸命やることこそが才能だと思っています。

――今回、監督をやってみて、また監督をやりたいと思ったのでは?

新しいことにチャレンジすると創作意欲は湧いてきますね。人はいくつになっても、失敗がつきものですが、だからこそ次は100%に近づくように頑張ろうとします。脚本家としても、時代の変遷とともに、新しいことをどんどんと取り入れていかないといけません。つねに新しい刺激を受け取れるような心を持ち続けないといけないと思うし、日々勉強です。勉強をすれば、うまくいく喜びを得ることができます。

――毎年のように連ドラの脚本を担当し続けていますが、還暦を超えてなお現役のトップランナーとして走り続けられる秘訣はなんでしょうか。

この仕事が好きだからやっているだけです。そして毎日、どういうふうに生きるかということを考えることも大事ですね。やはり体力がないとやっていけないので、体力を持ち続けるにはどうするかを考えます。よく例に出すのが、東山紀之氏が毎日腹筋1000回やっているという話。歳を取ると、そのすごさがわかるし、それを続ける彼の人間力もすばらしい。彼は華もあるし、人間性もすばらしいけども、それでも人間は日々鍛錬しないとダメになるのではないかというのがわかっているんでしょうね。

やはりこの仕事を続けたいし、新しいことも手掛けていきたい。阿部寛さんもそうだけど、とにかく歳を取ったらどんどん新しいことがやりたくなります。どんどん攻めに入るんです。失うものなどありませんから、1回くらい落ちたっていい。俺は連ドラで降ろされたこともありましたけど、それはチャンスでもあった。次の作品でエポックメーキングな作品が作れましたから。失敗を恐れずに頑張り続けるといいことがありますよ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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