暴走トランプ、「入国制限令」全米混乱の裏側 複数州の連邦地裁が大統領令を執行停止に

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米移民弁護士協会(AILA)によると、異なる空港で影響を受けた約200人の経験はさまざまである。ビザを持つ多くはAILAに対し、大統領令が発令されたにもかかわらず、問題なく米国への入国が許されたと語った。

一方、米国の永住権(グリーンカード)を保持する人の一部は、CBPから航空会社に許可されるべきとの指導が出ていたにもかかわらず、拒否された。トランプ大統領が大統領令に署名してから約8時間が経過したシアトルで27日午後10時ごろ、カナダとの2重国籍を持つイラン人はバンクーバーから到着後にカナダに引き戻されたと、AILAに報告している。それから30分後のニューヨークでは、JFKに到着したビザを保有する別のイラン人は問題なく入国できたという。

JFKで拘束されたイラク人の1人であるハミード・ハリド・ダーウィーシュさん(53)は、イラクで米軍の通訳を務め、米国人を助けたとして現地で脅された経験がある。

ダーウィーシュさんと、米軍と一緒に働いた経験のあるもう一人のイラク人の代理で起こされた訴訟によると、ダーウィーシュさんと家族のビザは1月20日に発行された。しかしJFKに到着するとすぐにダーウィーシュさんはCBP職員に拘束され、弁護士との接触を禁じられた。

難民を支援する弁護士と法科学生による難民支援プロジェクトからやって来たダーウィーシュさんの弁護士が、誰にコンタクトを取ればいいかとCBP職員に尋ねると、職員は「大統領だ。トランプ氏に電話しろ」と答えたという。

最終的にダーウィーシュさんは釈放され、議員や弁護士らと会うことができた。パスポートを握りしめたダーウィーシュさんの目には喜びの涙があふれた。もう1人のイラク人も入国が許可された。

米国自由人権協会の移民弁護士、アンドレ・セグラ氏によれば、JFKで拘束されていた7人が29日朝に新たに入国を許可されたという。同氏はロイターに対し、少なくともあと5人が拘束されていると語った。

グリーンカードをめぐる混乱

メディア報道と政府発表の矛盾が、大統領令の対応に苦心する航空会社に混乱をもたらした。事情に詳しい人物によると、CBPが航空会社に大統領令について知らせたのは27日遅く、電話会議においてだった。

CBPは28日正午前に、グリーンカード保持者は入国禁止対象に含まれず、米国への渡航が引き続き可能と文書で伝えた。この情報筋によれば、航空会社はグリーンカードを持つ渡航者の搭乗を許可していたという。

その後、トランプ政権の当局者は記者団に対し、米国外から渡航するグリーンカード保持者は、米国に戻れるか米領事館のチェックを受ける必要があると語った。「ケースバイケースで決められている」と、この当局者は語った。

29日朝、トランプ政権はこの問題を再び取り上げたものの、グリーンカード保持者がどのように、また、どの機関によって検査されるのかという疑問は残されたままだ。

「大統領令はグリーンカード保持者には影響しない」と、プリーバス大統領首席補佐官はテレビ番組で明言。ただし、入国や税関審査で通常以上の質問を受けることになると述べた。

だが、ある政権幹部はロイターに対し、そのような検査がどこで、どのように行われるかは決められていなかったと明かした。同幹部によると、検査は本来、CBPあるいは国務省の担当であり、ガイドラインもまだ作成段階にあるという。

「多くの異なる方法、異なる場所で検査される可能性がある」と同幹部は語った。

(Jonathan Allen記者、Brendan O'Brien記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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