東芝「解体」だけでは抜け出せない巨艦の窮地 「聖域」の原子力はそれでもやめられない

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この期に及んでも原子力事業は聖域なのか。

「次世代の収益柱」と期待されながら、10カ月前に東芝を債務超過から救うために売却された医療機器子会社の社長経験がある綱川智社長。そして、再び訪れた債務超過の危機を回避するために切り売りされる「現在の稼ぎ頭」半導体事業のトップである成毛康雄副社長。

原子力事業が招いた危機の尻拭い会見で批判を一身に浴びたのはその2人だった。東芝という会社全体の問題になっているとはいえ、原子力事業担当で、今回の事態を招いた責任が現経営陣でもっとも大きいはずの志賀重範会長は、昨年末の緊急会見に続いて今回もまた姿を現さなかった。

東芝は1月27日、半導体メモリ事業の分社化を取締役会で決議した。3月下旬に臨時株主総会での了承を経て分社し、3月末までに新会社の20%弱の株式売却を目指す。

重要な金額は今回も開示されなかった

昨年12月27日に浮上した原子力子会社買収に関連した数千億円規模の損失リスク。もっとも重要なその金額は、精査中として今回も開示されなかった。半導体メモリ事業の分社化方針は1月18日に東芝が開示済み。ほとんど新味がない会見で、数少ない新しい内容といえるのが、原子力事業の見直しだった。「これまでエネルギー事業の中で最注力としてきた原子力事業の位置づけを変えていく」(綱川社長)。

東芝は2016年3月期末の株主資本が3288億円、同比率は6.1%しかない。今回も損失額については「(2017年3月期の第3四半期発表を予定している)2月14日に説明する」(綱川社長)という説明にとどめたが、漏れ伝わってくる損失額は時間を追うごとに増加。「3~5(3000億~5000億)が、4~7になったイメージ」(取引銀行関係者)と、現状は最大7000億円に達するとの見方だ。何も手立てを講じないと債務超過になる可能性が高い。

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