MOOC革命で日本の大学は半数が消滅する! 高等教育のオンライン化がもたらす「衝撃の未来」(上)

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ビジネスモデルは人材紹介業

ところで、ここで疑問なのは、なぜ授業をタダで提供してMOOCがやっていけるのかということだろう。実は、先の「Udacity」の場合、そのビジネスモデルは人材紹介業にある。

「Udacity」では、いくつかの企業と提携していて、受講生の成績を企業に送る。すると、企業は戦力になると判断した受講生に声をかけ、採用となれば、「Udacity」に仲介料が入るというシステムになっているのだ。設立して1年で提携企業は350社、約20人がグーグル、ゴールドマンサックスなどの有力企業に採用されたという。

「Udacity」がこのようなビジネスモデルを打ち出したことは、アメリカの大学関係者に衝撃を与えた。なぜなら、このようなことが進めば、既存の大学を経た就職に大きな影響を及ぼしかねないということ。そればかりか、大学教育そのものの価値も暴落してしまう可能性があるからだ。

MOOCで重要視されるのは、大学の権威や名前ではなく、教授と授業の質そのものだからだ。

これを日本に当てはめてみると、現在のところ、日本の大学はほとんどが「大学卒」という学歴を与えるだけの存在である。となると、MOOCがさらに一般化すれば、その価値はどんどん低下する。アメリカですら、冒頭に述べたように、「半数の大学がなくなる」とされているのだから、今後は、世界中の多くの大学が消滅していくことまで考えられる。

つまり、MOOC革命は、かつてのオンライン授業による「Eラーニング」の進展とは様相を異にしているのだ。現在、子供をインタナショナルスクールに通わせている親御さんたちは、ほとんどが欧米の大学への進学を前提としている。となると、MOOC革命は選択肢が増えるのだから、子供の将来にかかわる重大な変化である。

しかし、日本の学校に子供を通わせている親御さんで、MOOC革命をご存知の方は本当に少ない。

※ 次回の記事では、MOOC革命が何をもたらすのか、さらに詳しくお伝えする

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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