【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第3回)グローバルな平和育成への契機(前編)

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●外国軍事基地の削減

 日本を含む世界各地に存在する外国軍事基地の削減と撤収は、軍縮と信頼醸成に重要な効果を持つので、G8の場で日本から勇気を出して提唱する価値がある。日本にある85の米軍施設と思い遣り予算2,170億円の削減交渉を早期に始め、防衛予算は各国に先がけて漸減することも国会で十分論議の上決定すべきであろう。敵の攻撃の対象となりやすい巨大な前方展開基地にかつてのような効用を期待できなくなる傾向にある。軍事同盟そのものも国際環境の変化により液状化しつつあるので時機を得た政策といえよう。
 外国軍事基地撤収後のいくつかの地には、その国が希望するならば、国連の緊急待機部隊や災害支援隊の駐屯と訓練センター設立を実現するよう国連と世界の関係諸国と連携して努力するのも一案であろう。

 「平和協力国家」構想を日本自身の政策表明と戦略的ブランドづくりの手段とするだけでなく、地球社会全体に向けたスケールの大きい「グローバルな平和育成」政策提言に発展させるためには、G8サミット諸国との対話を超えて地域機構と国連における多国間協議と非国家アクターとのシナジー創出型パートナーシップを形成していく必要がある。後編では、重要な具体的方途を更に考えてみよう。
第4回に続く、全6回)

功刀達朗(くぬぎ・たつろう)
国連大学高等研究所客員教授
国際協力研究会代表
東京大学中退、米国コーネル大学で修士、コロンビア大学で博士号。国連法務部、中東PKO上級法律顧問を経て、外務省ジュネーブ代表部公使、フランクフルト総領事、国連事務次長補、カンボジア人道援助担当事務総長特別代表、国連人口基金事務次長を歴任。90年国際基督教大教授、のち同大COE客員教授。編著に『国際協力』(95)、Codes of Conduct for Partnership in Governance (99)、『国際NGOが世界を変える』(06)、『国連と地球市民社会の新しい地平』(06)、『社会的責任の時代』(08)など。
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