【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第3回)グローバルな平和育成への契機(前編)

【洞爺湖サミットに何を期待するか】(第3回)グローバルな平和育成への契機(前編)

国連大学高等研究所客員教授 功刀達朗

第2回より続き)

●福田首相の「平和協力国家・日本」構想の展開

 福田首相は、年頭の施政方針演説(1月18日)とダボスの世界経済フォーラム(1月26日)において、そもそも平和は環境、貧困、保健衛生といった地球的課題解決の第一の前提条件であるとし、テロ対策、紛争後の国家再建、平和構築とそのための人材育成、アフリカ各地のPKOセンター支援などにより、日本は「平和協力国家」として責任ある役割を果たすと表明した。因みにダボスで使った英訳は、「平和育成国家」を意味する“Peace Fostering Nation”であり、これは他者に協力するというよりは、主体性を持って世界に率先して平和を育成・促進していく意味合いを持つ良い表現である。

 上に挙げた一連の実践例だけでは、イメージの刷新と日本国民の意識高揚のためのブランドづくりとしてはパンチが弱い。だが良く考えてみるとこの構想の地平線には、重要な可能性が見えてくる。時代を先取りした優れた平和憲法の下、いかなる戦争にも参加せず、非核三原則、武器輸出三原則など平和路線を曲がりなりにも維持し、また国連での軍縮や平和構築への努力が評価されてきた日本の平和主義は知られているが、これを大きく積極的に進展させる可能性がある。そのためには、グローバルな視野からの発想の転換と大胆なイニシャチブが必要である。

●軍縮により45兆ドル確保の可能性

 過去10年間に世界の軍備拡張は貴重な資源を呑み込み急速に進んでいる。気候変動のもたらす安全保障への脅威に対処するため、軍縮への合意を早急にまとめ上げ、温暖化対策への追加投資を得る可能性を模索すべきではないか。

 ストックホルム国際平和研究所の資料(SIPRI Yearbook 2008)によれば、世界の軍事費は冷戦中のピーク1.2兆ドルから1996~1998年に約8,300億ドルに下がったが、その後の10年間に60%増加し、2007年には1兆3,400億ドルに達した。この増加は一部の国々に集中している。中国の3倍増をトップに、東欧(主としてロシア)162%、アメリカ65%、中東62%などが注目される。また、軍備費大国トップ10ヶ国は、平均すればそれぞれのGDPの3%超を軍備にあてている。(最低は1%の日本で、ロシアは3.6%、アメリカは4.0%、サウジアラビアは最高の8.5%)このような数値をもとに概算すれば、2050年までに排出量半減に必要な45兆ドルは軍縮促進により十分可能となる。

 問題はどのようにして世界的に軍縮へのモメンタムを創るかである。多くの国では安全保障は国家・政府の専管事項と信じられていたが、近年来軍縮と非政府アクターの相互作用は増加傾向にある。対人地雷絶滅のためのオタワ・プロセスや今年5月に日本政府も遅ればせながら首相の決断で条約案に同意したクラスター爆弾禁止条約づくりのオスロー・プロセスは、米国、ロシア、中国などの軍事大国の反対にもかかわらず、カナダ、ノルウェーその他の中堅有志国家とNGOが連携して成功したものである。その他核兵器禁止、不拡散へ向けてのNGO活動も多々ある。
 武器産業又は貿易商社と政府、NGOとの相互作用には問題が多いが、ノルウェーは石油収入をもととする年金基金の投資先から核兵器、クラスター爆弾製造に関わっている企業を排除している。より広く社会的責任投資と透明性を理由に政府の規制が行われる国々もある。政府、国会議員、非政府アクター間の政策対話を通じ、また冷戦後、平和・安全保障や軍縮に強い関心を示す列国議員同盟(IPU)とも連携し、軍縮の世界同時進行への糸口を洞爺湖でつくり出してもらいたい。

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