日中対立を深める「ミサイル供与報道」の罪 "スクープ"したフィリピン紙を直撃してみた

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安倍首相(左)はフィリピンのドゥテルテ大統領(右から2人目)に何を話したのだろうか?(提供:Presidential Photographers Division/AP/アフロ)

フィリピンの現地英字紙フィリピン・スター(以下、スター紙)の電子版は1月15日、「ドゥテルテ大統領 私は日本によるミサイルの申し出を断った」と題する記事を配信した。

安倍内閣は2014年に武器輸出三原則を防衛装備移転三原則へと緩和させる閣議決定を行ったが、もし仮に安倍首相が先日のフィリピン訪問中にそのような提案をしたことが事実なのだとすれば、新しい三原則との兼ね合いで国内的な議論になるのは必至だ。

それのみならず、日本が南シナ海紛争の当事国に一方的に兵器を提供するとすれば、これまでの関係国への巡視船提供という段階を超え、日中対立が続く南シナ海問題が新たなステージに入ることを意味する。

ドゥテルテ大統領の発言とは?

安倍首相は1月12日から13日にかけ、フィリピンを訪問、ダバオでは両国首脳を含め16人が出席する形で少人数会合も開かれた。筆者が入手したフィリピン政府が作成した公式の記録によると、ドゥテルテ大統領は14日にダバオで行ったスピーチの中で、「実は安倍(首相)にあなたのミサイル、ミサイルはいらないと話した(Actually, sinabi ko kay Abe, hindi ko na kailangan iyong mga missile-missile)」と述べている。

タガログ語では、強調したり、一般的な考えを述べたりするとき、同じ言葉を繰り返すことがある。事前に「パトロール、パトロール」と「兵士、兵士」と繰り返している箇所があることからも、ミサイルが必ずしもミサイルそのものを指すのではないかもしれない。そのことを暗示するかのように、ミサイルと言ったすぐ後に、Muscle(腕力/圧力)とも聞き取れる言葉を発している。

この発言を、15日にスター紙が報じたわけだ。

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