医局崩壊!さらば、教授という”名ばかり職” もはや国立医大の教授もリストラされる時代に

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

国公立大の医大教授がリストラされる時代

少なくとも私の属する麻酔科業界では、もはや「教授」はあまりうま味のあるポストではない。ドラマ「白い巨塔」のように「数千万円の裏金をバラまいてまで得る」価値はなくなった。昭和時代には想像もできなかったことだが、山形大、東北大、神戸大、和歌山県立医大など、「国公立の医大教授がリストラ」に追い込まれる時代となってしまった。三重大では「教授1人残して、それ以外の麻酔科医が全員辞職」事件もあった。「東大教授が、もっと条件のいい職を見つけて、定年前に辞める」事件もあった。こういった事件はインターネットで簡単に追跡できるので、「それならオレたちも」と次の事件の引き金となった。

「教授を目指しています」という若者をみかけなくなって久しい。20~30代医師は、いまさらこの組織に新規加入しても、「長年の滅私奉公に耐えて教授になっても、昭和世代のようなうま味はない」「下手すれば一生ソルジャー」と悟ったようだ。その結果、「そもそも大学医局には属さない」「早々に開業独立」「海外就職」「外資コンサル転職」「フリーランス化」を選択する者が増えている。昭和時代にもフリーランス医師は存在したが、「無名私立医大卒」「定年後」「女性」などの、いわゆる医療界の出世競争からはじき出された医師であることが多かった。

ここ10年で目立つのは「東大や慶応医学部を卒業した30代男性」のような、従来は医療界内部での出世が半分保障されていたような層からの転身である。大阪では阪大医学部出身の若手医師が、麻酔科医派遣ベンチャーを立ち上げた。最近の経済情報誌などでよく目にする「せっかく東大に入ったのにそのうま味を生かさず、新卒でいきなりDeNAやら外資に就職したり、一度は大企業や官僚に就職しても数年で辞めてサクッと転職したり起業する若者が増加」と、似たような時代の流れだと思う。

筒井 冨美 ノマドドクター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

つつい ふみ

地方の一般的家庭に育ち、小中高大とも国公立卒。米国留学、大学講師を経てフリーランス麻酔科医。医学博士。日米の心臓麻酔専門医。テレビ朝日ドラマ「ドクターX」取材協力

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT