中国人観光客を引き寄せる豪州流おもてなし 日本はこの国に勝てる観光の魅力を出せるか

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なぜ、それほどまでにオーストラリアは中国人の熱い視線を集めているのか。その秘密は、さらなる予想を超えた”豪州流おもてなし”にあった。

ハーバーブリッジの頂上でカラオケ大会

シドニーのシンボル、ハーバーブリッジを見上げてみると…何やら橋のてっぺんで騒いでいるように見える集団が。早速、取材申請をして地上130メートルの橋の上へと安全装置を身に付けて向かってみる。すると、大勢の中国人観光客たちがビュンビュンと顔に吹き付ける強風もどこ吹く風、頂上へ向かって必死に歩を進めていた。急増する中国人客への対応のため雇われている中国人ガイドが、空から見たシドニーの名所を丁寧に案内している。

だが、実は彼らのお目当ては、シドニーの絶景――だけではなかった。頂上に到着しておもむろに手に取ったのは、何とカラオケ用のマイク! すると突然、中国で人気だという名曲が流れ始め、参加者がマイクを次々に回しながらデュエット風のカラオケ大会が始まった。

地上130メートルの橋の上で行われていたのはカラオケだった(写真: bridgeclimb.com)

実はこれ、春節で訪れる中国人を盛大にもてなそうと、この時期だけ特別に企画されている“空中カラオケ”。ハーバーブリッジの頂上に、カラオケ用のモニターが設置され、シドニーの青空にはミラーボールまでもがきらめいている。登録されている曲は、中国で人気の歌謡曲やKPOPなど全8曲、チケットのお値段なんと約2万4000円! かなり強気な価格設定にも思えるが、シドニーの絶景を見渡しながら空の上でカラオケができる体験なんてほかにはないと、一同、テンションはマックスだ。

「まさか、こんな空の上でカラオケができるなんて! 中国ではこんなことできないよ。なんたって空気が汚いから。これは最高の体験だ!」。ある中国人観光客は興奮ぎみだった。確かに、このおいしい空気とカラオケのマリアージュは、決して中国ではできない ”特別”な体験に違いない。

大興奮の中国語カラオケを身ぶり手ぶりで盛り上げていたハーバーブリッジツアー担当者のオーストラリア人男性は、こちらにウインクをしてつぶやいた。「今、中国人は最大のマーケットなんだよ。ひと昔前までは日本人が最大の顧客だったけど、今は完全に中国に変わったね。彼らはたくさんおカネを落としてくれる。オーストラリアにとって、いまや大きな経済効果なんだよ! 中国にいるかのように感じてもらうための”特別感”を出すことが大事だよね」

彼は、まるで中国にいるかのように感じてもらう、そのためにアイデアと労力は惜しまないと言って、満面の笑みを浮かべた。

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