鈴木おさむ「僕はイクメンと名乗りたくない」 森三中・大島美幸が産後半年で復帰した理由

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田中:だから、妻が出産してからの半年間は、育児よりもまず、妻のアシストができるようになろうと思いました。妻は掃除や洗濯にとてもこだわりを持って自分でやりたがったので、では僕は肉や野菜をきちんと摂れるご飯を作れるようになろうと、料理を受け持つようになりました。そして育児は、妻がメインでやりながら、僕もおしめを換えたり、抱っこしたりと、自分でもできることはできるだけやる、という考え方にしました。

男の育休とは「育児をする妻のため」に休むこと

つまり、男性の育休というのは、育児をするために休むというよりは、育児をする妻のために休むことなんじゃないかと思います。

田中:僕も、昨年の1月に子どもが生まれて、同じ発見をしました。僕は大学の教員をしているのですが、2月、3月はたまたま大学が春休みなので、実質的に育休をまるまる2カ月取ったようなものでした。僕も、最初は子どもの世話しようと思って休んでいたのですが、いざ休んでみたら、妻のケアをしないと、全然生活が成り立たない。

「産後は育児以前に、妻のケアをしないと生活が成り立たない」と田中氏(撮影:梅谷秀司)

出産した女性の体が回復するまでの期間を、「産褥期」といいます。ものの本では、出産から約6~8週間を指すと書いてあったので、8週間目が過ぎれば急速に回復していくんじゃないかと思っていました。でも、本で勉強したものと、実際に目の当たりにするとでは、全然違う。うちの妻は人よりちょっと重くて、8週間目を過ぎても気分が優れない日が多かったんです。本人のそばに誰もいなかったら、大変なことになっていたと思います。

母親が産後そんな状態に陥っているというのに、日本の男性は、子どもが生まれても2.3%しか育児休業を取っていない(厚生労働省「雇用均等基本調査」2014年)。父親が仕事に行っていて、しかも実家のお母さんの力を借りられない家庭は、母子だけでいったいどうやって生活しているのでしょう。母親がひたすら我慢して、それが前提で社会が回っている。自ら産後の女性を目の当たりしたからこそ、少しぞっとしますね。

鈴木:だから、母親の中には育児ノイローゼになる人もいますよね。そう考えると、江戸時代の長屋は、子育てするのにとてもいい環境だと思います。隣の人に「うちの子ちょっと預かってて」と言えるわけですよね。あるいは、祖父母と同居しているだけでも負担は全然違う。育児ノイローゼ、待機児童の問題など、今は育児をめぐる社会問題がたくさんあるけれど、それはやっぱり、核家族で東京に集中して住んでいることに対して、無理が生じているということなんじゃないかな、とも感じます。

そこで女の人が仕事を持っていると、さらに大変になります。男女雇用機会均等法が成立したのは1985年だから、たかだか30年前のことなんですよね。それから30年経って、今や女の人が働くのは普通で、ようやく出世する段階になってきました。この10年ぐらいで、(芸能)業界でもようやく女社長が出てきた。でも、女の人が働いて出世することと、子どもを産んで、育児をしよう、というのって、両立させるのはとても大変です。

男性側の意識として、やっぱり女の人を認めて、その下につくというのは、なかなか納得できないことだと思います。優秀な女性は出世すればいいじゃん、と思うんですけど、いざ女性に抜かれると、抜かれた男の悔しさって半端ない。同時に、男が育児のために仕事を休むということも、彼らにとってなかなか納得できないことだろうなと思います。

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