沖縄という相対感のなかで創造性豊かに可能性を広げる
エメラルドグリーンの海に代表される美しい自然や、温暖な気候、穏やかな県民性などで魅力が語られることの多い沖縄。しかし、沖縄には本土では決してできない経験や学びがあるという。「ここには自らの生き方を変えるチャンスがあり、絶対に来る価値があります」と話す、トリニティ代表取締役社長で沖縄大学人文学部准教授の樋口耕太郎氏に、その真意を聞いた。
相対感との直面によって得られる大きな価値
投資家として多くの実績を挙げ、高い評価を受けていた樋口氏が沖縄に来たのは2004年。買収したリゾートホテルを再生するためだ。「買ったホテルがたまたま沖縄の物件だったわけで、偶然といえば偶然です」。しかしそれから12年、樋口氏は沖縄で事業を起こし、大学で講義を行い、これからも本土に戻るつもりはないと断言する。
始まりは、再生のため乗り込んだリゾートホテルでの衝撃的な体験だった。沖縄では、東京やニューヨークで成果を挙げてきたやり方がまったく通用しなかった。「大切にしているものが根本的に違う」。そう思うと同時に、今までとは異なる世界観、生き方、仕事のやり方ができるのではないかという可能性を感じ、「沖縄はそういうチャンスを与えてくれるところなのだ」と確信したという。
キーワードは「相対感」だった。本土から来た人間は、沖縄の社会を通じて自分を見つめる重要なきっかけを得ることができるのだという。相対感に直面することに大きな価値があり、沖縄に来る本当の価値はまさにそこにあるのではないかとさえ樋口氏は言及する。「その価値を、青い海や空だけで終わらせるのは、あまりにももったいない。沖縄に正面切ってぶつかれば、価値観の大きな違いにショックを受け、傷つくことも多いかもしれませんが、ほとんどの人にとって大きな学びになるはずです。沖縄に来たほうがいいか否かと聞かれれば、僕は絶対来たほうがいいと答えます」。