「ネット依存」に陥る子どもに親ができること 中高生の約8%に依存の疑い

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臨床心理士の菅野真由香さんは、当事者が「現実に居場所がない」と感じている場合、問題が長期化しやすいと指摘する。

「当事者と親の理想に大きな隔たりがある場合もあります。当事者ができていることを探して褒めてあげたり、ゲームに関する会話から始めてみたり、関わり方を変えれば、当事者が問題を意識しやすくなるのでは」

生きていてくれれば

前出のAさんは、14年11月、実家から訪ねてきた母と会った。荒れた部屋に入れるのに抵抗があり、近所の喫茶店で話した。

「『生きていてくれればそれでいいから、自分の思うように生きてほしい』と言われました。そこまで信頼してくれているのか、と思いました」(Aさん)

母親が樋口医師を訪ねたと知り、Aさんは15年2月、自分で予約を入れ、久里浜医療センターを受診した。初診時に、樋口医師と臨床心理士と2時間近く話した。

中学校が荒れていて、嫌がらせを受けた経験があること。人が信じられなくなり、不眠気味だったこと。特にやりたいことが見つからず、大学に進んで、ゲームにはまったこと、いつからか不安だったこと──。全部を話すと、これまで抱えてきたモヤモヤがすっきりした。

次の診察で、ネット依存の増加と課題を知り、「自分も臨床心理士になり、人を助けたい」と考えるようになった。

3回目の診察では、「臨床心理士になるために、大学に復学しよう」と決意し、ネットゲームから離れた。ゲーム仲間には、「忙しくなるから」と伝えた。落ちていた体重と体力を戻すため、ランニングと設営のアルバイトもはじめた。

「これだけ早い回復は珍しいと言われました。でも、最初のうちはやることがなくて、ゲーム動画を見たり、ネットも1日6時間くらいしていました。母にお礼を言えたのも、1年以上経ってからです」(Aさん)

Aさんは、現在、NIPやキャンプにメンターとして参加している。積極的になり、人と関わる仕事がしたいとボランティアもはじめた。

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