「ネット依存」に陥る子どもに親ができること 中高生の約8%に依存の疑い

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一人称視点でプレーするFPS(ファースト・パーソン・シューティング)というジャンルの人気ゲーム。プレーヤーは全世界にいて、チームを組み腕を競う大会も開催されるほどだった。

大学2年生の春、高校時代に知り合ったゲーム仲間に誘われ、チームに入った。進学のため実家から上京してきたが、大学生活に思ったほどの手ごたえがなかったこともあり、徐々に授業を休むように。7月には完全に大学に行かなくなった。

チームのメンバーは14~15人。うち大会など本番でエントリーするスタメンは5~8人ほどで、イン率や腕で決まる。大会での優勝をめざし、様々な場面を想定して練習を重ねた。

「仲間と時間を共有して切磋琢磨する。スタメン争いもあって、まるで部活のよう。毎日が充実していました」

小学校から高校まで、サッカー部に所属していたAさんにとって、心地よい感覚だった。

だが、11月、目標にしていた大会で2位に敗れると、チームのモチベーションが下がった。

チームで別のゲームに移り、Aさんにも以前のような情熱はなくなったが、ゲーム中心の日常は変わらなかった。プレー中は楽しかったが、不安を感じるようになっていた。3年次から大学は休学しているが、同世代は就職活動をしている。このままでいいのか。14年7月、母親からメールが届いた。

「ネット依存じゃない?」

ギクリとした。そうかもしれない、と思った。

日本初のネット外来

久里浜医療センターでは、11年7月、日本初となるネット依存治療の専門外来を開設した。以来、青少年のネット依存に関する相談件数は増加の一途をたどっている。

「ネット依存の大多数は中高生で、親御さんは真剣に悩み、相談に来ます。そして依存対象はオンラインゲームであることが圧倒的に多いのです」(樋口医師)

オンラインゲームの世界は、成果や成功が明快という点において、現実世界より優しい。プレーすれば腕も上がり、経験値も稼げる。ゲーム内にはコミュニティーも存在し、強ければ仲間に一目置かれる。成功体験はもちろん、承認欲求を満たすこともできる。

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