火葬場心中を題材にした漫画が話題の理由

発売から半年、「よろこびのうた」の人気続く

福井県大野市であった事件をモチーフにした漫画『よろこびのうた』

2005年に福井県内であった老夫婦が火葬場の焼却炉で亡くなった心中事件をモチーフにした漫画『よろこびのうた』(講談社)が、昨夏発刊された。焼却炉で老夫婦が心中した部分以外はフィクションだが、老老介護や児童虐待、限界集落における人手不足、耕作放棄、認知症など現代社会が内包する問題が盛り込まれ、発刊から半年たった今もネットを中心に話題になっている。

モデルとなった事件は05年11月7日、福井県大野市であった。午後2時すぎに、使用されていない火葬場の焼却炉の中から80代の老夫婦の焼死体が発見された。車内には「午後8時、妻とともに家を出る」「1時間ほど待ち、炭や薪で荼毘(だび)の準備をする。妻は一言も言わず待っている」「7日午前零時45分をもって、点火します。さようなら」といった走り書きをした給油伝票が残されていた。

老老介護を通して見えてくるさまざまな社会問題

当時を知る関係者によると夫婦は2人暮らし。妻は足が不自由で認知症、夫にも持病があった。自宅や田畑を市に寄付するとした遺言状を1年以上前に用意して市に郵送しており、老老介護の末の心中とみられるという。

漫画の舞台は「北陸の勝野市」。田園地帯の集落で火葬場から老夫婦の焼死体が見つかり、その半年後に、東京の記者が取材に訪れる――といった形で始まる。心中に至るまでの経緯を追っていくストーリーだが、同時に老夫婦の周辺で起こっていた、さまざまな社会問題も描かれる。

作者のウチヤマユージさんは、あとがきで「事件当時から『何か』が私の心を捉えて離さなかった。『何か』をバトンタッチできていれば幸い」などと記している。

講談社イブニング編集部によると、電子書籍版のウェブ広告をきっかけに主にネット上で話題になっているという。「人生を終えるということの深さをまざまざと感じさせられる」「涙が出た」などの感想が寄せられている。

2016年7月発刊。コミック版は950円、電子書籍版は540円(ともに税込み)。

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