「持ち家」リスクを甘く見ている人が招く不幸 高齢マンションの滞納金問題は深刻だ

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今後、持ち家は子の世代の「負」動産になりかねない(写真:Ikon-Images/アフロ)

東京近郊にある世帯数約300の分譲マンションA。1970年代の竣工当時は、子育て世代の20~30代のファミリー層に人気があった物件で、マンションの敷地内では子どもたちが遊ぶ姿があちらこちらで見られた。だが、40年以上経った今、そんな光景は皆無だ。住んでいるのは高齢の夫婦か、一人暮らしのお年寄りばかりだからだ。

昨年、そのマンションAで70代の男性の孤独死が発生した。孤独死自体は高齢者が多く住むマンションでは珍しくはない。身寄りのないお年寄りが自宅でひっそりと息を引き取ることは起きうる。住民間の交流が乏しい現代では、隣人の様子をあまり気にかけない。今回大きな問題に発展したのは、孤独死以後、管理費と修繕積立金の支払いが滞り、滞納金がどんどん積み上がっていることだ。

孤独死に限らず、マンションの所有者が死亡した場合、相続人に管理費や修繕積立金の支払い義務が発生する。子どもやきょうだいにすぐに連絡がつき、相続人が確定できればそれほど問題は大きくならない。だが、近くに身寄りがいないお年寄りの場合、相続人の特定ができないことがある。マンションAはまさにその典型例である。

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マンションAで孤独死した男性には子どもはおらず、両親も他界していた。そこまではわかっていたが、きょうだいの有無は不明だった。利害関係者となるマンション管理組合の理事長が、役所で住民票や戸籍謄本を入手して調べると、きょうだいは4人いることがわかった。ただそのうち、長男は死亡していた。

この場合、長男の子どもが代襲相続人となるため、さらに調査する必要がある。結果としてその長男には4人の子どもがいることが判明した。ここまで実に相続人は少なくとも7人。国内各地の役所に問い合わせて、把握するのに3カ月以上も要した。ただ問題は解決したワケではない。相続人が管理費と修繕積立金の支払いを了承してくれるまで、滞納はなくならない。

滞納が6年間、140万円に及ぶ

一方、神奈川県にある世帯数500を超える大規模マンションBでは、短い人で数カ月、長い人では実に6年間、金額にして実に140万円も滞納している住民がいた。この人は高齢者ではなく、1人で子どもを育てるシングルマザーの女性だった。収入が少なく支払うことができなかったようだ。居住者全員で構成するマンション管理組合は問題を認識していたが、どう解決したらよいのか糸口がつかめず、長期間にわたって問題が放置されていた。

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