月給5万円の旅役者に嫁いだ元OLの悪戦苦闘 親に勘当された娘は覚悟を決め幸せを掴んだ

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「自分が好きになった人についてきたのだから、やっぱりもう一回頑張ろう」。

旅役者の妻として生きる覚悟を決めた瞬間だった。

涙を流したあの覚悟の日から20年。みやびさんの現在の姿は、当時からは想像もできないほど、たくましくなっていた。実は当時売れない旅役者だった夫は、そののち看板役者に成長。自分の旅一座、「劇団錦」を立ち上げるまでになった。

元OLが座長妻に大躍進!

そう、裏方だった元OL妻は、座長の妻になっていたのだ。泣き出しては外に連れ出していた長男は若座長として人気役者に。その下には現在中学生の長女も増え、家族は4人になっていた。

「劇団錦」は現在総勢18名。5つの家族が共同生活を送っているが、その顔触れは、ほとんどがワケありの人ばかり。妻と離婚後、2人の息子と共に入団した親子や、昨年の熊本地震で仕事を失い入ってきた兄弟。さらに、夫と別れ10歳の娘と入団したシングルマザーなど、複雑な事情を抱えた団員たち。これまで散々苦労してきた元OL妻が、なぜ、さらなる苦労を背負い込むのか? そこにはかつて、同じように行き場をなくした自分を受け入れてくれた「旅一座」への感謝の思いがあった。

元OLはついに座長妻に。劇団員の面倒を見る生活だ

そんなワケあり劇団員の座長妻の一日は、超がつくほどの多忙ぶり。そんなある一日に密着した。

朝9時。みやびさんの一日は、若手劇団員を叩き起こすことから始まる。寝坊したものは、容赦なくしかり飛ばす。この日の公演は、昼12時と夕方5時半の2回。若手は起きてすぐ化粧をし、朝稽古を始めなければならない。

いざ、稽古が始まれば、かつて芝居の「し」の字も知らなかった元OL妻が、若手劇団員のダメ出し。稽古が付けられるほどに成長していた。

朝稽古が終わると、次は朝食の準備。1度に炊くお米は2升、つまり20合。これを、朝昼晩で計3回、60合の米が一日でなくなる。この18人分の食事を、毎日一人で作っているみやびさん。そのため、超多忙妻ならではの工夫もある。洗い物を少しでも減らすため、お盆をラップで包みお皿代わりに…。あらゆる知恵を駆使しないと、座長妻は務まらないのだ。

そうこうしている間に、昼公演がスタート。すると、素早い手さばきで自らをメイクし、着物に着替えたみやびさん。なんと、自ら役者として舞台へ立つのだ。その実力たるや、なかなかの腕前。熱演を見せた。今では、100近い演目、全てのセリフが頭に入っているという。

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