インド製薬最大手を決意の買収 第一三共が仕掛けるM&Aの新方程式

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インド製薬最大手を決意の買収 第一三共が仕掛けるM&Aの新方程式

「2030年を見据えた成長には『複眼』が不可欠だ」(第一三共の庄田隆社長)。

6月11日に明らかになった第一三共によるインド製薬メーカー・ランバクシー・ラボラトリーズの買収は、昨日までの「M&A方程式」を一変させた。

買収で手にした3枚のカード

ランバクシーはインド最大手で後発医薬品世界10位に位置する。だがインド国内で医薬品の特許制度が整ったのは05年。それ以前は新薬を開発しても後発品として売らざるをえない状況にあったにすぎず、「単なる後発品企業というより純粋な医薬品メーカー。インド国内ではトヨタあるいは武田薬品工業の位置づけ」と、三菱UFJ証券の中沢安弘アナリストは指摘する。その証拠に、同社は第一三共が手掛けてこなかったマラリア治療薬などの新薬候補を保有する。

ランバクシーの興味深いところは、自国外にも成長の源泉を求めてきた結果、49カ国に展開し、北米と欧州を足した売上比率が5割に達する国際企業であることだ。

今回の買収で、第一三共は何枚ものカードを手中にした。1枚目のカードは、国際的なプレゼンス。従来21カ国だった世界拠点は56カ国に拡大し、特にロシアやルーマニアのような3割成長中の新興国へ一気にリーチを広げた意味は大きい。2030年まで見通せば、BRICsだけで今の560億ドルから最大4200億ドル市場に成長する予測もある。これは現在の米国と日本を合計した規模に相当する。

もう1枚は「後発品カード」だ。現在、各大手メーカーは既存主力品が相次いで特許切れを迎える「2010年問題」に直面している。特許失効後は後発品に順次切り替わるが、グループ内の後発品メーカーが、特許切れ製品を後発品として売れば、製品収益の“流出”は最小限で済む。

また、ランバクシーは米国で98の後発品を申請中だが、そのうち180日の独占販売期間を得る(収益的にうまみが大きい)とみられる製品が18ある。新薬と後発品という競合する二つの事業を持つことは、カニバリゼーションのリスクを上回るメリットをもたらすと判断したもようだ。

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