アリババが惚れた、越境ECベンチャーの正体 累計調達額は創業2年で47億円!

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――商品情報はどのように整理していますか。

大きく分けると、日本での情報収集、翻訳、中国での加工という3段階で行っている。まず、そもそもこの商品は何がすごいのか、という情報を集める。たとえばカイロを思い浮かべてほしい。日本人は説明なしですぐ理解できるが、中国人はそうはいかない。どういう仕組みで熱が出るのか、どんな利用シーンがあるのか、どんな会社が作っているのか…。わからないことだらけだ。

普通のECサイトには詳しく載っていない情報もあるので、会社のホームページや、ユーザーのレビューも参照する。これを専門にやるチームを置いているが、とにかく膨大な作業なので、人力とシステムを併用して集めていく。写真素材も日本側で集め、足りなかったら自分たちで撮影する。

中国側で情報を加工する際には、消費者の特性を踏まえ、どこが最も推すべきポイントか、どんな表現が伝わりやすいか、写真をどう使うかなどを現地社員が吟味し再構成していく。それでやっと1商品の販売ページができあがるが、これはあくまで基礎のオペレーション。使い方がわかりづらい商品は動画を作ってフォローするなど、ほかの手段も使っていく。

日本側と中国側が衝突することも

さらに、現地のSNSを使った情報拡散も行う。中国には特定のユーザー層に大きな影響力を持つオピニオンリーダーが、さまざまな分野に存在する。「この商品の想定ユーザーはこういう人だから、この人とタイアップするのがよさそう」といった知見を溜めているので、中小メーカーもうちを通せば、SNSで宣伝効果を高められる。

SNS経由でブランドや商品の魅力を届けられれば、価格を下げなくても買ってもらえるという利点がある。すでに成功例が複数生まれており、手応えを感じている。

翁永飆(おう・えいひょう)/インアゴーラ創業者・CEO。上海生まれ。1988年に日本へ留学し、1996年に横浜国立大学大学院電子情報工学研究科で修士号を取得、伊藤忠商事に入社。2000年にアクセスポート(現JWord)を設立し、代表取締役に就任。2005年に中国のソフト会社とのジョイントベンチャーとしてキングソフトを設立、現在も代表取締役会長を務める。2014年にインアゴーラを設立(撮影:梅谷秀司)

――膨大な作業ですね…。

要は、2カ国の文化的ギャップを、社内ですべて吸収するというイメージ。だから、日本側と中国側の社員のぶつかり合いは絶えない。

たとえば、日本のメーカー側がブランドイメージを守るために「伝え方や写真を加工しないでほしい」と言っても、中国側が「こんな状態で売れるわけがない!」と反発して勝手に手を加え、日本側が怒ってしまうとか…。どちらにも悪気はないので、丁寧に対応しなければならない。

今はやっと、ビジネスを拡大するのに必要な臓器がそろったという感覚。そこにどう血を通わせていくか。これからは日々の作業に加えて、日本の商品や中国のユーザーに精通する人員を育て、体制を強化していかないと、血は流れにくくなり、詰まってしまうだろう。

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