知恵とスピードを追求し巨大生保とは一線を画す−−佐藤美樹 朝日生命保険次期社長

知恵とスピードを追求し巨大生保とは一線を画す−−佐藤美樹 朝日生命保険次期社長

 藤田譲社長の在任期間12年というのは保険業界でも最長だ。長期在任による功罪もあったのでは?

それは本人に聞くべきことだろう。在任期間が長引いた背景には時代が厳しかったこともある。9・11以降に株価が暴落し、評価損を穴埋めするため内部留保を取り崩さざるをえなくなるなど、経営不安に陥った。その後、回復の道筋をつけるのにこれだけ時間がかかったということだ。

ただ、どこかの大きな会社の社長のように自分の意見をごり押しする人ではなかったので、経営戦略面でもめたことはない。一方、長かったことで、結果的に人事面などに停滞がみられたことも確か。新しいことを始めるため、社員の気分を前向きにするためにも経営刷新は必要だ。

 保険会社は今、変わらなければ10年後に生き残ることができない。根本的な変革を迫られていると思うが?

よくそう言われるが、それほど悲惨な将来が待っているとは思わない。人口が減少するので、死亡保障のニーズもなくなってくると思われているかもしれない。だが、今後10年くらいは、30歳~40歳代の団塊ジュニアと呼ばれる世代が死亡保障を必要とするので、死亡保障もそこそこの水準は維持する。まあ、そこから先はわからないが…。

一方、シニアが増えることと医療技術の進歩とが重なって、第3分野のニーズは確実に増える。公的保障でカバーできていた部分も、期待できそうにないとなれば、民間の保険を利用するようになる。よくご承知のような年金問題が起こっていることから考えても、貯蓄・年金のニーズはもっと劇的に顕在化するはずだ。

さすがに楽観できる環境にあるとは思っていないが、4~5年で市場がなくなると言うのはいいすぎだろう。

 上位生保と比較すると、課題も多い。今後、どのような施策を打ち出していくつもりか。

巨大生保に規模では敵わないので、同じ土俵では戦わない。商品から販売チャネル、マーケットまで他社がやっていない特色ある事業を、知恵を絞って展開するつもりだ。

もちろんあまりにニッチすぎると、ただ単に他社と違うことをやっているという存在証明にすぎなくなり、収益も上がらない。だから、ある程度、ボリュームがあって、成功しそうなものに限るが…。

現在の収益源である営業職員チャネルのレベルを上げつつ、それ以外、たとえば今、新規参入が相次いでいるが、まだ当社が取り組めていない銀行窓販チャネルなども前向きに検討する。ただ、社内には元本保障型の変額年金保険に対して慎重論も多い。ボリュームは出るが、契約者の元本割れリスクを肩代わりすることで財務面の負担も高まるからだ。だから定額年金と第3分野商品とを組み合わせるなど創意工夫を加えていく。

そのほかにも大都市圏に特化した販売チャネルや通販など、従来路線とは違うアイデアはいくつもある。それらをひとつずつ、実験を重ねながら、収益が出ると確信したものについて本格的に展開していく。

 保険会社は横並び意識が強い。いくら工夫しても、すぐ他社が同じことを始めるため出そうする特色が特色とならない。

だから、永遠に走り続けるしかない。大きな収益にならなくとも、数年分の先行メリットは必ずある。大きな会社は急には曲がれない。われわれは小さいからすぐに曲がれる。要は知恵とスピードだ。
 
 だが、そのスピードが外部から見るといかにも遅い。

言わんとする意味はわかる。だが、素直に首肯できない。そもそも生命保険という商売は、取りかかってから成果が出るまでに時間がかかる。それがマスコミなどに悠長と言われるのかも知れないが…。とにかく変革を押し進めるのが私の使命だ。

 これからはトップダウンで、ガンガン引っ張っていくと?

トップダウンなどとは思っていない。そもそも私にはカリスマ性がないから(笑)。

要は決断次第。責任は俺が取るから、失敗をおそれずやれと。どんどん新しいことを提案してくれれば、いいと思ったらどんどん採用するつもりだ。だから、私が「なんだこの生ぬるい提案は」と突き返すようなものではなく、過激でも突拍子がなくともいいので、どんどんアイデアを持ってきて欲しいと思っている。アイデアがなければ、議論そのものが始まらない。
 
(筑紫祐二 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)

さとう・よしき●1949年東京都生まれ。72年慶應大学経済学部卒、朝日生命入社。金融法人部長等を経て04年常務執行役員。12年という異例の長期政権となった藤田譲社長の後を受け、7月1日の総代会後、社長に就任予定。

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