大阪名物「あみだ池大黒」の知られざる大進化 粟おこしの老舗が挑む「アメリカの家庭の味」

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もはやおこしと思えない商品も(写真:あみだ池大黒)

「当社の家訓は『暖簾(のれん)に胡坐(あぐら)をかくな、日々新たに』というものです。お客様の意向を踏まえ、つねに新しいことに挑戦していかねば、明日はありません」と小林社長は言います。

確かに、新しいことをたくさんやっています。『マシュー&クリスピー』などは、一見、おこしには見えません。同社にホームページに写真を送れば、それをプリントしてオリジナルの『マシュー&クリスピー』も作ってくれます。結婚式の引き出物、ゴルフのホールインワンの記念品などにお使いいただいているそうです。とても老舗のあみだ池大黒が作っているとは思えません。

しかし小林社長は、次のように言います。「いや、パッケージの後ろを見てください。ちゃんと『あみだ池大黒』と書いてあります」とこだわりを述べられます。「新しいことに挑戦はしますが、一方でレトロな感覚も忘れたくありません。いずれ原点回帰の必要も出てくると思っています」。

関西の百貨店で限定販売

新奇のみを追わず、古き良き伝統にも目配りを忘れない。この絶妙のバランス感覚があるかぎり、同社の伝統は守られていくと思いました。

なお、本稿で取り上げた『pon pon Ja pon』や『マシュー&クリスピー』は関西でしか買えず、それも限られた百貨店でしか手に入りません(時々、催事コーナーで取り上げられたりします。またネット注文も可能です)。大変に手間のかかった商品なので、なかなか大量生産がしにくいのかもしれませんが、この希少性も人気の秘密なのだと思いました。こうして、期せずしてヒット商品の王道を歩んでいるのもまた、伝統のなせる技なのかもしれません。

オンラインショップで購入した『pon pon Ja pon』と『マシュー&クリスピー』(写真:筆者撮影)

ちなみに筆者もオンラインショップで『pon pon Ja pon』と『マシュー&クリスピー』をおのおの3個ずつ注文。到着して早速賞味しましたが、『pon pon Ja pon』は、小粒でほんのり甘いポン菓子のよう。胡麻きんぴら、スパイスカレーなど独特の味もそろえています。一方で『マシュー&クリスピー』は、もはや、おこしとは思えぬしっとりとした食感。デコレーションもかわいく、味や香りはまるで外国のスイーツのようで、おいしさと楽しさを同時に味わえます(あくまで、個人的感想ですが)。

そしてお菓子の袋の後ろには、小林社長が言われたように、きちんと「製造者:株式会社あみだ池大黒」の印字があります。まさに、「のれんに胡坐をかかず、日々新た」な精神の生んだ見事な具体例だと思いました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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