フルマラソン4時間切り!85歳「超人」の秘密 老化は意志の力である程度抑えられる

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ホイットロック氏の古い写真 (写真:Ian Willms/The New York Times)

トロント・マラソンで履いていた靴は15年前のものだし、ウエアは20〜30年前のものだ。コーチもいなければ、特殊な食生活を送っているわけでもない。トレーニングの記録も取っていなければ、心拍計も身につけていない。

走った後に氷風呂に入ることもなければ、マッサージも受けない。冬には雪かきをし、夏には庭仕事に精を出すけれど、ウエートトレーニングや腹筋運動や腕立て伏せとは縁がない。レース当日を除いてはストレッチ運動もしない。投薬も受けておらず、飲んでいるのはひざにいいといわれるサプリメントだけだ。

身長は1.7メートル、体重は50〜51キログラムで体格は細身だ。また、非常に優れた酸素運搬能の持ち主であるとともに、この年代の人間ではめったにないような筋肉量を維持している。速度を維持しつつリラックスして走ることができ、肉体年齢という意味でも走行タイム的にも、時計の針に逆らってやろうと闘志をみなぎらせている。

最大酸素摂取量は「大学生並み」

「人というのは自分で思うよりずっと多くのことがやれるものだと思う」とホイットロックは言う。ロンドン郊外で生まれた彼の言葉には、いかにも英国人的な謙遜がある。現役時代は鉱山技師として働いていたそうだ。「ただし、ばかにならないとやれないが」

81歳だった4年前、ホイットロックはモントリオールのマクギル大学で生理学的検査や認知検査を受けた。最大酸素摂取量(運動の際に筋肉が使うことのできる酸素の最大量)についても調べた。これは高ければ高いほど、有酸素運動が得意であることを示す指標だ。

五輪出場レベルのクロスカントリースキーの一流選手であれば、最大酸素摂取量は90くらい。一方、80歳代で自立した生活を営んでいる人であれば20程度だ。ちなみにホイットロックの最大酸素摂取量は54。娯楽としてスポーツをたしなむ大学生くらいの若者とほぼ同じ水準だったと、検査を行った運動生理学者のラッセル・ヘップルは言う。

最大酸素摂取量が54というのは、80歳代としては卓絶した数字だと思えると語るのは、ボール・ステート大学(インディアナ州)のスコット・トラップ教授だ。トラップ教授は80歳代から90歳代前半になっても好成績を維持しているスウェーデンのクロスカントリースキーヤーを対象にした研究を行ったことがある。

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