松下幸之助「日本は風格ある国家を目指せ」 経営の神様が問わず語りに語ったこと

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けど、これからは違うわね。みんな豊かになった。そして、みんなそれぞれに考えて、それぞれの行動をするようになった。それはそれでええんやけど、それだけではいかんね。というのは、バラバラやと。国としてどこに進んで行くのか、わからんと。

まあ、それがいいという人も、おるかもしれんが、みんなが自由に考え行動出来るけど、国としての方向が定まっておるということが、必要になってくる。国としてどんな考え方で、なにを目指して動いていくのか、進んで行くのか、ということやな。

そういう国の方針があってはじめて、国民も力強い活動を展開できるし、無意味な無駄を排除していくことも出来る。また政治の生産性を高め、国民の生活をさらに物心ともに充実させることが出来る。そういうことが出来るようになるんやな。

日本は「不気味な国」

また、国の方針が明確になっておるということによって、海外からの信用とか信頼を得るということも、可能になるね。

これからは国際化の時代やから、このことは、よう考えておかんといかん。今のように日本に明確な方針がないとすれば、外国は、日本はなにを考えておるのか、どんな国なのかよう分からん。

まあ、戦後から暫くは、日本は、さほど大きな国ではなかったから、日本がなにを考え、なにをやろうが、国際社会のなかで、あんまり影響もなかったし、だから、外国も関心がほとんどなかったわな。日本がどんな国で、どんな考えをもっておるのか、まあ、どうでもよかったわけや。

しかし、いまは違うがな。非常に大きな国になった。経済を中心に国際社会のなかで無視出来ない存在になってきたわけや。そうなると、日本の動きが国際社会のなかで注目されるようになった。

ところが、外国が日本を見ても、分からんと。どんな考えをしておるのか、どんな動きをしようとしているのか、分からんと。そういうことでは、外国にとって実に不気味であるということになる。なんか分からんけど、強いと。

忍者?うん、忍者みたいなもんや、いまの日本は。そうなれば、誤解も生じるし、不安や恐怖心も生まれるから、外国が日本に対して攻撃的になるわな。それは当然やと。このままだと、経済摩擦だけではなくて、さまざまな外交分野でも摩擦が起こるようになるで。

国民が納得し、世界の多くの国々が賛成してくれるような国の確たる方針を、毅然として早く確立せんといかん。日本はこういう国です、こういう考え方です、こういう進み方をします、という方針やね。それがないと、これから日本がどんな動きをしても、批判され非難されるだけでなく、つけ込まれるようになるわね。

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