「開業時」を再現した銀座線特別車のこだわり 懐かしの「電気が消える」様子も・・・

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そして、この車両の目玉といえるのが、イベント時だけの限定ではあるものの、走行中に「電気が消える」様子の再現だ。

照明の消灯時に点灯する予備灯。開業時の車両の装備品から型を起こしてつくったという(撮影:尾形文繁)

かつての銀座線で車内の照明が消えていたのは、車両に電力を供給する「第三軌条」の切れ目に車両がかかった際、電力の供給が途絶えていたためだ。このとき、各車両の照明が1両ずつ消えては点くという現象が起きていた。現在の銀座線車両は各車両間が電気的に結ばれており、編成中のどこかの車両に電力が供給されていれば照明が消えることはない。今回の特別仕様車も最新の1000系だけに、実際に照明が消える事態は発生しない仕組みだ。

だが、かつての車両をイメージしたせっかくの特別仕様車。「『電灯が消えるのは昔の銀座線のシンボルだったね』という話が出た」ことから、イベント時にはこの現象を再現できる仕組みを持たせることになったという。走行中に先頭車が第三軌条の切れ目を感知すると、制御装置がスピードなどを計算して後続車両の照明も段階的に消灯するというハイテクな仕組みだ。

照明そのものも最新のテクノロジーが盛り込まれており、LEDの調色機能によって通常運行時は一般車両と同じ蛍光色、イベント時には電球色に切り替えることができる。見た目はレトロな雰囲気の特別仕様車だが、その雰囲気は最新技術によって支えられているのだ。

「瞬間消灯」はいつ見られる?

特別仕様車は計2本が導入され、1本目が1月17日以降、2本目が3月中旬から通常ダイヤで走り始める予定。運行の予定などを公開する計画は今のところないというが、明らかに車内の雰囲気が違うだけに、走り始めれば利用者の注目を集めるのは間違いない。地下鉄90周年のイベントにも活用される予定だが、走行中に「電気が消える」様子を見られるイベントがいつ行われるかなどは未定。懐かしの「瞬間消灯」を早く体験してみたいという人も多いだろう。

都心の地下を走る通勤の大動脈として、いわゆる「観光列車」やイベント用車両とは縁が遠いと思われていた東京メトロ。実際、今回のような特別仕様車を導入するのはこれが初めてだ。華やかな都心の繁華街を結んで走るとはいえ、どちらかといえばビジネスライクなイメージの強い地下鉄に登場した凝ったデザインの特別仕様車は、今年で90周年を迎える東京の地下鉄に新たな楽しみを提供してくれそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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