60代は「若手」、深刻化する海女の後継者難

漁獲量激減も歯止めかからず

岩ノリ漁に励む川尻光子さん(右)ら海女。後継者不足に危機感を募らせる=福井県坂井市

重油禍が去って20年、海女は3分の1に

「三国の海は二度と潜れないと思った」。福井県坂井市の雄島漁協安島支所の海女代表、川尻光子さん(72)は重油が漂着した1997年1月7日、黒く変わり果てた海を前に声を失った。海産物の全滅も覚悟した。重油が回収され、影響がなかったことに安堵(あんど)し、海の懐の深さと、もたらす恵みに改めて感謝したという。

だが、重油禍が去って20年、海女は3分の1に減り、後継者不足と漁獲量減に直面する。対策が待ったなしという点は、重油被害の時と同じだ。

県は重油事故後、県内沿岸で大気、水質、海産物などへの影響や回復状況を調査。大気や生物など一部に一時的影響があったものの、全体的には目立った変化はなかった。事故翌年の1998年3月の調査では、県内海岸に重油はほとんど認められなかった。

川尻さんは重油回収後の97年の初ワカメ漁を振り返る。「育っているのを見た時は本当にうれしかった。今まで通り収穫できる喜びでいっぱいだった」。重油事故前の96年と97年を比べると同漁協の漁獲量は、ワカメと岩ノリは減ったが、ウニ、アワビ、サザエなどは増加した。

だがその後、ウニやサザエは減少傾向にある。97年に約1180キロあったウニは、2015年には約120キロと激減。サザエも約1万9030キロから約9920キロに減った。

要因について同漁協の下影務組合長(72)は、「重油事故との関連は分からないが、海女が減ったことによる人手不足がある」という。同漁協所属の海女は、1997年の157人から昨年は55人にまで減少。60代の海女は「若手」とされるほど、高齢化も進む。20年以上前は、中高生が夏休みのアルバイトで一緒に潜り、海女の仕事に触れる機会があった。しかし現在は、肉体労働を嫌う傾向や生活スタイルの変化などから、海女の魅力が若者に伝わらないという。

ボランティアらの尽力で重油禍から立ち直った海なのに、このままでは海女がいなくなってしまうと、川尻さんは危機感を募らせている。「現状では海女が一人減るだけで大きな痛手。高齢化も進み早く対策を立てないと」と話す。同漁協は今年、後継者育成につながればと、一般参加者を募り、ワカメやウニ、アワビなどの漁体験を計画している。

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