パナソニック、EV用電池「大バクチ」の勝算 1500億円投資でテスラと"一蓮托生"に

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テスラのEVは、洗練されたデザインと一回の充電で航続可能な距離が長いことなどが人気でEV市場シェアの22%を握る(2015年、EV Sales調べ)。2017年半ばから生産が予定されている「モデル3」は、航続距離が344キロメートルと現在主力の「モデルS」に遜色ない性能ながら価格を3万5000ドルに設定したことで注文が殺到(「モデルS」の価格は5万6200ドル)。予約開始から約3週間で40万台を受注した。

今後は生産台数を現在の年間5万台から2018年までに50万台に伸ばす計画だ。実現すれば2015年の全メーカーのEV販売台数22万台の2倍以上に膨らむ。テスラの販売が伸びればパナソニックの電池供給も比例して増え、工場稼働率が上がれば投資回収も可能という算段だ。

勝ち馬に乗った格好のパナソニックだが、必ずしも前途洋々というわけではない。これから世界の電池大手との熾烈な戦いが待ち構えているからだ。

モバイル用では完敗、車載用はリベンジマッチ

テスラのイーロン・マスクCEO(中央)とパナソニックの津賀一宏社長(右)(写真:パナソニック提供)

2000年代前半まで2次電池メーカーの主要顧客はパソコンメーカーだったが、その後スマートフォンメーカーが取って代わり、そのスマホも今や成長が鈍化。電池メーカーは次なる有望顧客として電気自動車メーカーに照準を合わせており、EV向け電池の開発競争は激しさを増している。

リチウムイオン電池市場では、シェア1位のサムスンSDI(韓国)、2位パナソニック、3位LG化学(韓国)の3強が世界シェアの6割を占める。だが各社ともに、ノートパソコン向け需要の縮小と車載電池開発の先行投資がかさみ、2015年度の電池事業の業績は、サムスンSDIが赤字、パナソニック、LG化学も収支均衡圏と惨憺たる状況だ。

また、車載向けに投資を割く余力のない電池メーカーは、ソニーが村田製作所に電池事業を譲渡したように撤退を余儀なくされている。EV「リーフ」を擁する日産自動車も傘下の車載電池子会社を手放して車載電池を外部調達に切り替える方針だ。

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