中高生には「部活」とは違う選択肢が必要だ ドイツ型「市民クラブ」は日本で成立するか

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また、部活の時間的な拘束も大きな問題だ。2016年度のスポーツ庁の調査では、中学校の部活動において、1週間当たりの休養日を「設けていない」学校が22.4%、「週1日」が54.2%となっており、半数以上の中学校の運動部が、週6日以上活動していることになる。疲労により授業に集中できなかったり、成長期の生徒が無理のある練習を続けた結果、ケガをする、ということも起こりうる。

余暇の時間が少ないということは、家族との時間も減るということだし、家庭での学習時間を削ることにもなる。部活は多くの面で、生徒たちを学校に縛りつけているのだ。

多くの日本人にとって部活は当たり前だが、世界的に見れば珍しい制度である。ほかの国の中高生世代は、どのようにスポーツや文化活動を行っているのか。一例として、筆者が住むドイツの部活事情を紹介する。

ドイツには、スポーツクラブを運営している学校もあるが、Vereinという地域の市民クラブに入るのが主流だ。日本で言うと、スポーツクラブやカルチャースクールに近く、多くのクラブは、定款を設け役員を据え、非営利団体として正式に登録している。statistaの統計では、11~16歳までの生徒の約77%が、クラブ、もしくはそれに準じるグループに所属している。日本の部活の参加率より高い。

世代を超えて交流するドイツのクラブ

2013年7月13日のフランクフルター・アルゲマイネ紙によると、筆者が暮らすヘッセン州には、住民1000人に対し78ものクラブがある。中学校1年から3年まで、各学年300人ずついたとしたら、70以上の部活の選択肢があるようなものだ。そこから、自分に合ったクラブを探すことができる。年齢で分かれているクラブもあれば、子どもから大人まで一緒に活動するクラブもあるし、スポーツや音楽はもちろん、陶芸やワイン造り、ヨガなど、多彩なジャンルがある。

クラブは基本的に掛け持ちもできるし、いつでも参加・退会できることが多い。忙しければ、休むか、活動日が少ないクラブに移ればいい。試合で勝ちたいのならば強いクラブに参加すればいいし、趣味程度なら、ゆるい活動をしているクラブに参加すればいいのだ。最初は初心者向けのクラブに入り、その後、中級、上級クラブに移動することも可能だ。費用はクラブによるが、筆者が参加していたバドミントンクラブは、月10ユーロ(約1230円)だった。

筆者のパートナーが参加している卓球クラブの練習を見に行ったことがあるが、部活とはまったく違った雰囲気だった。中高生世代も大人と一緒に練習していて、年上が年下を指導する、年下は準備と片づけをしなくてはいけない、ということはなく、家族や恋人を連れてきている人もいた。パートナーは年下のメンバーの進路相談にのり、パートナーもまた、仕事について年上のメンバーに助言を求めていた。世代や立場を超えた交流は、社会性を身に付けるのに役立つし、将来の視野を広げることにもなるだろう。年齢を問わずに参加できる開かれたコミュニティは、地域の活性化にもつながっている。

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