「解雇の金銭解決」が奏効したイタリアの実情 類似した社会構造を持つ日本は多くを学べる

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イタリアと日本、労働問題をめぐる環境は実によく似ています(写真:Iakov Kalinin / PIXTA)

皆様、明けましておめでとうございます。本年も日本の労働法の問題点について、さまざまな観点から切り込んで行きたいと思います。2017年の最初は、新年にふさわしく、少し大きな議論をということで、海外の解雇規制について見ていきたいと思います。

日本と同様に厳しい解雇規制が存在したイタリア

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私が所属している第一東京弁護士会・労働法制委員会では、昨年、イタリア労働法の現地調査に行ってきました。イタリアは、電車やバスがよくストライキをすることで知られるように、労働組合の活動が活発で欧州の中でも労働法が厳しい、労働者に有利な国でした。

しかし、2016年の1月からイタリアでは労働法改革が行われました。少子高齢化や経済の低迷など、イタリアと日本の置かれた状況には共通点が多く、イタリアの労働法改革は日本にとっても有益な示唆に富んでいます。

もともとイタリアの労働法は、日本と同様に厳しい解雇規制が存在しました。解雇が認められない場合、解雇が無効となって労働者が元の会社に復職することになり、しかも復職が認められた場合、解雇してから復職するまでの賃金(これを「バックペイ」といいます)を支払わなければならないのです。この点は、今の日本も同じです。

しかし、イタリアでは昨年より、一部の差別的解雇を除き、原則として解雇は金銭で解決できるようになりました。金銭解決の水準が最低2カ月から最高24カ月となり、手当の計算は勤続1年につき2カ月分です。

イタリアでは、ひとたび就いた仕事は一生のものとの考えが社会に強く根付いており、労働者の解雇は企業倒産などの場合を除き、原則禁じられてきました。そもそも、「働く」ということの価値観は社会の制度や人々の考えに深くかかわっているものであるため、経済危機においても労働市場規制改革に着手することなく放置されてきたのです。この点も、日本と非常によく似ています。

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