栗原類が語る「発達障害の僕が直面した現実」

「空気が読めない」のは本人もつらい

周囲に迷惑をかけず、嫌な思いもさせずにわかってもらえればそれに越したことはないのですが、現実には無理だろうと思います。そもそも僕自身は、疲れていても頑張らなきゃいけないと思って毎日を過ごしているので、忙しくなって、頑張れば頑張るほど、その瞬間は「これ以上は無理だ」という客観的な判断ができません。そもそも疲れたときは、判断力がかなり落ちてしまいます。ゆえに、他人に迷惑をかけたくないと思っていても、自分が気づかないうちに迷惑をかける引き金を引いてしまうこともあります。

だからこそ、自分で管理していくことを無理に進めるのではなく、できるだけ頑張りつつ、家族やマネージャーなど周囲の身近な人につねにモニタリングしてもらっています。周囲の人にきっちりチェックしてもらうことで、一定のパフォーマンスは保てるし、自分の力を最大限に発揮できる環境が整います。その環境がなければ、どんなに頑張ろうという気持ちがあっても、結果は出せないのです。
 

他人の立場に立つのは難しい。だから…

発達障害の症状のひとつとして、「空気が読めない」ことがよく例に出されます。空気を読めないとは、他人が何を考えているのか推測できないことです。実際、他人の気持ちを推し量る能力が著しく低いし、それが人間関係における大きな壁となることも多いです。

しかし、社会で生き仕事をしていくうえで、人間関係は避けて通ることはできません。それでは、人間関係を円滑にしていくにはどうすればいいのか。他人の気持ちを推し量る能力が低いので、スキルを上げる努力は頑張ってもたかが知れている。それよりも「自分がやられたら嫌なことは、他人には絶対にしない」という基本的なことを小さい頃から考えてきました。

本当の意味で人間は、完全には他人の立場になんて立てないと思います。日本の小学校の道徳的価値観では、よく「他人の立場になって考えなさい」といわれますが、それは発達障害じゃなくても難しいですし、本当の意味では、その人の立場はその人じゃなきゃわからない。

だからこそ、自分がやられたら嫌なことは他人にはしない。もう一歩進んで、自分がしてもらってうれしかったことは、誰かにしてあげられるようになりたいと努力をする。さらに一歩進んで、自分は嫌だと思わないけど、他の人はされたら嫌なのかもしれないという発想力を持つことが大切だと考えています。この3つは、小さい頃から母に言われてきたことでいつも心掛けています。とはいえ、3つとも成立させるのはなかなか難しいことですが…。

僕は人の表情から感情を読み取ることが苦手ですが、それはやはり、僕自身が他人を観察する力と、他人に対する興味が弱かったからだと思います。他人の心の動きや、言葉の端々に表れる感情の変化、そういう日常の中で無限に発生する場面のほとんどを、僕は理解していなかったのです。

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