当選5回以上に多い中選挙区制が生み出した世襲制

当選5回以上に多い中選挙区制が生み出した世襲制

塩田潮

 自民党の国会議員は4割が世襲だが、当選5回以上の衆議院議員に限れば、世襲率は55%にはね上がる(河野議長を含む103人のうち、57人が世襲議員)。
 現在の小選挙区・比例代表並立制は1996年からで、当選5回以上の議員は以前の中選挙区制で初当選を遂げた人たちだ。93年に政治改革を推進した元さきがけの政治家が「世襲政治横行の主因は中選挙区制。小選挙区制にすれば世襲は少なくなると思った」と語っていたが、間違いではなかった。大幅減とはいかないが、確かにいまは減少傾向にあるといえる。

 中選挙区制では、党の組織や支持基盤よりも、候補者個人の選挙地盤が当落を左右した。選挙地盤は政治家の私有財産のようになり、一方で支持者たちの共通の利益を維持・拡大させる利益共同体と化した。そこで後継者問題が起こると、共同体と共通利益の維持を図る人物として、二世が浮上する。その場合、影で先代の夫人である「ゴッドマザー」が大きなパワーを発揮する例も多かった。

 中選挙区時代、多くの世襲政治家は初当選後、党務や閥務は先代と同じ派閥に入って習得したが、政策や予算、法制度の勉強には家庭教師が必要だった。その役割を霞が関の官僚たちが担った。イロハから官僚の手ほどきを受けると基本的な考え方や問題意識、基礎データなども全面的に頼りにするため、知らず知らずのうちに官僚の掌の上でしか政治的判断ができない政治家となる場合が多い。これを「霞が関のマインドコントロール」と呼ぶ。これでは霞が関にメスを入れ、官僚機構と闘うという 発想や姿勢は生まれない。人材の劣化にはこんな事情も影響していたと見られる。

 中選挙区制はなくなったが、いま自民党の中核を担っているのは当選5回以上の人たちだ。リーダーの人材の劣化が指摘されるが、この層の世襲蔓延と無関係ではないだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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