経団連が企業に「賃上げ」を呼びかける理由 「賃上げのモメンタムは継続していくべき」

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政府は「働き方改革」として、長時間労働の是正と同一労働同一賃金の実現に向け、取り組みを強化している。榊原会長は「経済界としても重要な課題として取り組んでいきたい」と述べ、長時間労働の是正については、残業や休日労働に関する労使協定「36協定」の見直しが必要との認識を示した。

政府が提示した「同一労働同一賃金ガイドライン案」に関しては「日本の多様な賃金制度や雇用慣行にも留意しており、妥当な内容だ」と前向きに評価。「産業界としても積極的に議論に参加していきたい」と語った。

ただ「労使の話し合いを含めて非常に時間を必要とする。法改正、ガイドラインの施行までには十分な時間をとっていただきたい」と配慮も求めた。

長時間労働をめぐっては、電通<4324.T>の新入社員だった高橋まつりさんが過労自殺をして1年が経ったが、榊原会長は「大変痛ましい事件で、こういったことを絶対に起こしてはならない」と語った。

デフレ脱却を実現する年に

米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、市場では経済政策に対する期待感から株高・円安が進んだ。市場ではこの「トランプ相場」がいつまで続くかに注目が集まっているが、榊原会長は「株はさらに高い方向にいくのではないか」と予想。為替については「大事なことは適正な水準で安定することだが、今の状況は適正範囲だ」との見方を示した。

経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス <4188.T>会長)はトランプ米政権への期待先行で「夏に向って2万1000円程度まで上昇する可能性があるが、暮れにかけて(トランプ次期大統領が)1つや2つの間違いをして、最終的には1万9000円程度になるのではないか」との見通しを示した。

一方、日本商工会議所の三村会頭は「今の世の中は金融が実体経済を振り回している非常にまずいバランスになっている」と懸念を示し、「株価も為替も乱高下するだろう」と予想した。

榊原会長は今年の日本経済について「世界経済の追い風の中で回復基調が加速するのではないか」との見通しを示した。「今年は成長軌道への回帰を果たすことができる年だ」と位置づけ、「米経済が活気づく方向に行くので、世界経済全体のインフレ傾向を強める可能性がある。日本も円安・株高を背景に物価も上昇し、デフレからの脱却を実現する年になるのではないか」と予想した。

(志田義寧)

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