生命保険を契約する際に押さえるべき3要点 商品やサービスを作るのは消費者だ

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「手数料がわからないATMを利用するのはおかしいのではないか」といった常識的な疑問を持つ消費者が増えると、情報は開示されるようになるはずです。

ちなみに筆者は、保険の契約に要するコストはせいぜい数パーセントくらいが妥当なのではないか、と考えています。大手保険会社と比べると収入が2桁少ない「埼玉県民共済」が、掛け金の約97%を入院給付金や剰余金の払戻金として加入者に還元している事実があるからです。

3 保険相談の場で「相談料」を支払う

家計のことを考えると、生命保険の活用は必要最小限にとどめるのが賢明です。先に書いたとおり保険に加入すると高いコストがかかるからです。

ところが、消費者の保険相談に対応している大半の保険会社の営業担当者や代理店は、顧客の保険料負担が大きくなるほど収入が増える報酬体系の下で働いています。あらかじめ「利益相反」といわれても仕方がない立場です。

時に私は、保険ショップや銀行の窓口に「老後資金」の相談に行ってみることがありますが、「自営業者のあなた(筆者のことです)の場合、保険商品より『確定拠出年金』の利用を最優先すべきです」といったアドバイスを受けたことは一度もなく、外貨建て保険などを利用した積立や運用を勧められるばかりです。

彼らのビジネスモデルを考えれば当然だと感じます。なかには手数料を度外視して顧客に有益な情報を提供する人もいるかもしれませんが、自己犠牲を伴う個人の良心に頼るより、良心的なアドバイザーが報われる仕組みがあるほうが良いでしょう。

この問題を解決するのも消費者だと思います。保険販売から手数料等の報酬を得ていないファイナンシャルプランナーなどに「相談料」を払って助言を受けるのです。

現状、保険会社や金融機関に勤務していないファイナンシャルプランナーなどでも、何らかの形で販売業務と関わっていることが珍しくないのは、まだ相談におカネを払う消費者が少ないからでしょう。

しかし、保険会社から商品の販売実績に対して報酬を受け取る人と、顧客に情報提供料を求める人では、どちらが顧客側に立てるでしょうか。顧客本位でありたいアドバイザーを育てるのも、消費者なのだと思います。

以上、3点を実行してもらえると、まず、難解な保険が市場から消え、わかりやすい保険が残ります。

わかりやすい保険は、「比べやすい保険」でもあるので、価格競争が活発になります。(事実、一定期間の死亡に備える「定期保険」では、保障機能が1つで、比較検討が容易なため、低料金化が進んでいます)

価格競争の際には、各社とも死亡保険金や入院給付金の原資を大きく削るわけにはいかないので、契約にかかる経費を削減することになるはずです。すると、加入者に還元される保険料の割合が高まります。

経費削減が行われると、営業担当者や代理店などが保険販売から得られる手数料等も下がるでしょう。しかし、各種の相談業務に対して相談料を払う人が増えると、商品販売ありきではないアドバイスができる人材には、新たな道がひらけると思うのです。

わかりやすく、保険料から加入者に保険金・給付金として還元されるおカネの割合が高い保険が増えるのは、消費者にとってありがたいばかりでしょう。保険業界関係者も胸を張れるはずです。繰り返しになりますが、こうしたことは消費者次第で実現することなのです。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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