【産業天気図・損害保険】不払い問題一巡、営業再開で各社大幅増益の強気計画。ただ、クレジット市場不安定さ残り「曇り」模様

予想天気
   08年4~9月  08年10月~09年3月

2008年度の損害保険業界は自賠責保険料の引き下げがある一方、前年度までの保険料不払い問題が一服、従来の営業活動が本格化することで各社とも増益を見込んでいる。ただ、足元ではサブプライム関連の証券化商品の残高が残っていることや自動車離れ加速などの問題がくすぶっており空から雲が晴れることはなさそうだ。

今09年3月期の上場損害保険7社の業績は、経常収益が前期比0・6%増、正味保険料が同1・5%増、経常利益同22・6%増と、増収増益になる見通しだ。ただし、これはミレアホールディングス(7月1日付けで東京海上ホールディングスに商号変更)<8766>が、前08年3月期に英国ロイズを中心に保険業務を行う英キルングループの買収を完了したことにより正味保険料が約800億円上乗せされることが大きい。
 
 自賠責保険料がこの4月の契約分より11年ぶりに平均24%も引き下げられており、この結果、ミレアHD(東京海上HD)を除く6社ベースでは経常収益は前期比4・0%減、正味保険料も同2・1%減となる。
 
 ただし、自賠責保険の影響を除くと、各社とも正味保険料は増収という強気の見通しを立てている。これは、ひとつには前08年3月期までは保険金支払いの適正化活動で十分な営業活動ができなかったが、不払い問題に一区切りをつけたことで、従来の営業活動が再開できることがある。さらに、たとえば損保ジャパンは「One−Step」、三井住友海上は「GKクルマの保険」、東京海上日動は「Total assist」など、今春より新商品を投入していることもある。新商品投入により、販促活動がしやすくなることに加え、契約切り替え時に無事故無違反割引に伴う保険料単価の低下を緩和する効果があるからだ。
 
 また、火災保険を中心に保険料の取りすぎによる返戻金は、7社計で05年度から07年度までの2年間で約300億円に上った。各社ともほぼ3分の2が返還済みのため、少なくとも200億円超の正味収入保険の下押し圧力が外れることになる。
 
 自賠責保険は「ノーロス・ノープロフィット」の原則により、損益面でマイナスとはならず、経常利益以下の収益には影響しないため、経常利益は同24・9%もの大幅増益に転じる見込みだ。大幅増益に転じる要因としては、サブプライム関連の実現損と評価損で836億円を計上し、31億円の最終赤字となったあいおい損保<8761>が今期、140億円の最終黒字に転換することに代表されるように、08年3月期に大幅に収益を圧迫した証券化商品の影響がなくなることが大きい。
 
 ただし、S&Pが米金融保証会社(モノライン)のアムバックとMBIAの金融保証格付けを「トリプルA」から「ダブルA」に格下げし、FGICも「ダブルB」から格下げ方向で検討に入っているとされ、クレジット市場が完全に落ち着いたわけではない。あいおい損保を除けば、各社ともオンバランスの証券化商品の残高が残っている上、オフバランスのデリバティブ商品がこれに加わるため、市場動向には注意が必要となる。
 
 さらに、08年3月期は大規模な自然災害がなかったため、多額な保険金支払いもなく、7社計の自然災害保険金は約400億円で済んだ。だが、09年3月期の期初段階では平年並みの自然災害を見込んでいるため、1400億円規模に膨らむことになる。また、正味収入保険料の増加に伴い責任準備金の負担が増すことも利益圧迫要因として働く。さらにニッセイ同和<8759>や富士火災<8763>は、今09年3月期から本格的に代理店システムや基幹システム整備に取り組むこともあり、経常減益となる見通しだ。
 
 国土交通省によれば、2007年度末の国内自動車保有台数は06年度末より15万5000台減ったという。前年度割れは1946年の統計開始以来、初めてのこと。若年層の自動車離れが言われて久しいが、それが統計の上でも確認された格好であり、国内損保業界を取り巻く環境は厳しさを増している。各社の強気見通しを足し上げると、かなりの規模の損保市場が現れることになるが、市場が縮小しているなかではシェアの取り合いにならざるをえず、今期の事業戦略次第で優勝劣敗が決まってくる。

【筑紫 祐二記者】

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