「SK-Ⅱ」のCMに中国女性が感動したワケ

日本企業の中国向けビジネスには何が必要か

つまり、結婚市場にとっての「売れ残り」というより、自分の親にとっての「売れ残り」ということである。そして、中国女性が何よりも求めてやまないのは、愛しているし愛してもくれる大きな存在である親から独立した「個」としての自分を理解してもらうことだ。

今回SK-Ⅱの広告が多くの中国女性を「感動させた」とまで評価されたのは、CMの最後に、親に自分の思いを伝え、そして、親がそれを理解してくれたというハッピーエンディングがあったからだ。親から独立して自分らしく、楽しく生活するという先進国並みのライフスタイルの追求に加えて、自分をいちばん苦しめている親世代との意識の格差を解消し、お互いに理解し合うということは、若い中国女性がいちばん求めていることだろう。SK-Ⅱは、ターゲットである彼女らのニーズを、とても深く把握していたというわけだ。

「剰女」に加えて、もうひとつのSK-ⅡのCMも大きな話題になった。以前の記事でも「網紅(ワンホン、インターネットで人気を集める人)」「顔値(イエンジー、顔の偏差値のような外見レベルのこと)」など、今の中国の流行語を紹介してきた。今回、SK-ⅡのCMに関して紹介するのは「男神(ナンシェン)」だ。

「男神」は「女神」の対照語だが、もともとは中国語にない言葉で、女性にとって神様のような存在を指している。日本で言えば、10年以上前にあった韓国人俳優のペ・ヨンジュンの「ヨン様」ブームで見られたような熱烈なファン心理を呼び起こすスターを考えてもらえばよい。お笑い系、イケメン系、かわいい系などいくつかのジャンルがあり、その中で「禁欲系男神」というジャンルがある。普段はクールで礼儀正しく他人に興味などないようだが、愛する人の前では素顔を見せる、いわゆる「ツンデレ」的なキャラクターを指してこう呼ぶ。

その「禁欲系男神」のナンバーワンとして、非常に高い人気を誇るのが、台湾出身の俳優である霍建華(ウォレス・フォ)だ。最近、人気ドラマの主役を演じたことで、その地位をつかんだ。俳優に専念し、広告などにあまり出ていないために、控えめで神秘的なところもある有名人という印象である。だから、女性の理想を具現化していて、手の届かない男神にぴったりだ。確かに、若い女性の間で大人気だし、40歳近くになっても肌がきれいだ。でも、「まさかSK-Ⅱのイメージキャラクターになるとは!」と、ファンの女性もあっと驚く起用だったことは間違いない。

「男神」のウォレス・フォは、SK-Ⅱの「運命を変えよう」というCMで格好よさを存分に見せつけ、メーカーの狙いどおりに「憧れの男神が自分をターゲットとしている化粧品を使っている」と、見事に女心を引き付けた。昨年の夏、訪日中国人にインタビューした際には「日本に来たら絶対SK-Ⅱを買わなきゃ!だって、男神がキャラクターをしているブランドだもの」「実際に彼の肌はきれいだし、あまりCMに出ない人だから、自分で使って良いと思いCMに出たのでは。だから商品を信頼できる」といった声をいくつも聞いた。

「SK-Ⅱ」のCMに日本企業が学ぶべきこと

彼女たちへのインタビューで感じたのは、ファン心理も相まっての購買意欲の強さ、男神の高い好感度や説得力だ。SK-Ⅱの場合、「女性化粧品には女性のキャラクターを起用する」という固定観念から離れて、思い切って商品のターゲットである女性があこがれている男性有名人を起用したことで、話題を集め、実際の購買行動にもつなげることができたと言えるだろう。

SK-Ⅱの広告には議論も多い。剰女のCMでは「リアルな現実を描いている」と歓迎する声もあれば、「剰女をテーマにするのは、女性差別ではないか」との声も聞いた。しかし、間違いなく評価に値するのはターゲットである中国人女性の微妙に揺れる心理、そして真のニーズをしっかりと把握できていた、ということだ。

日本企業が中国人の消費を取り込むためにどうすればよいかを考える場合も、根本的に必要な要素は、SK-Ⅱと同じだろう。日本ブランドに高い関心や好感を持っている中国人が多いのは確かだ。でも、たとえば、日本人女性に人気のある雑貨を爆買いする若い世代は、金色や赤など日本人が想定する典型的な「中国人の好み」に合わせたモデルの商品には関心が低いかもしれない。自社商品のターゲット層が本当は何に悩み、何を望んでいるのか――。簡単には見えてこない心理や真のニーズを深く掘り下げて、最適なアプローチをあらためて検討することが、大きな成功を収めるためには避けては通れない過程なのだ。

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