監視カメラやNシステム、DNA鑑定も危ない 警察の「デジタル捜査」で個人情報は大丈夫か

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こうした動きは2020年の東京オリンピックに向けてますます広がるだろう。デジタル捜査は監視カメラだけに限らない。

クルマのナンバーを読み取るNシステムは、検問のデジタル化ともいえる。警察が全国の国道などの主要幹線道路に設置。走行中の自動車のナンバープレートを自動的に読み取って、手配車両のナンバーと照合するシステムである。Nシステムは警察庁が設置したものが1511式、都道府県のものが179式とされる(2015年5月末日現在)。

実は筆者の家近くにはNシステムがある。自分はそれらしき人物から尾行されたり、2008年の北海道洞爺湖サミットの際には自宅が監視されたりしていたから、自家用車はチェックされていると思っている。警察官の不祥事の調査に使われているとの証言もある。つまり、Nシステムは犯罪捜査だけではなく、警察にとって不都合な人物の監視にも使われている可能性があるのだ。

問題は警察が犯罪捜査の名の下、市民のプライバシーを監視しているかもしれない点にあり、それは法的な根拠を欠く捜査手法ともいえよう。 

尾行でGPSを使うことの是非は

GPS捜査にも問題がある。これは人工衛星を利用し、被疑者の行動を正確に割り出す手法だ。

後押ししたのが2015年6月に総務省が示した、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」である。これで警察が裁判所の検証許可状をもって要請すれば、各事業者は端末の位置情報を警察に提供することになった。当初はこの位置情報の取得に際し、スマホの画面に「位置情報が取得されている」という表示を通知しなければならなかった。総務省はこれを改正、昨夏発売の一部の新機種から、捜査機関が本人に通知をすることなく、位置情報を取得できるようになっている。

それ以前には警察が自らGPSをすでに活用していた。警察庁は2006年6月に移動追跡装置要領を制定。全国の警察に対して、一定の条件で7類型の犯罪(非公開)を対象に、GPS端末による尾行を認めている。

この捜査手法の問題点としては、「捜査の対象者の同意を得ることなく、対象者の自動車に発信機を設置することが、対象者のプライバシーを過度に侵害することになるのではないかという点であり、そのような捜査手法が許されるとしても、少なくとも裁判所の令状を得て行うべきではないかという点にある」と、町村泰貴・北海道大学大学院法学研究科教授は『GPS端末設置捜査をめぐる裁判例の現状』で述べている。

GPS端末を利用した捜査に関しては、「新たな立法的措置も検討されるべきだ」との指摘もある。 令状なしのGPS捜査をめぐっては、裁判の判断も分かれており、いずれ最高裁判所が何らかの判断を示すとみられる。

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