将棋界が直面する未曾有の危機とは何か? 将棋ソフトに右往左往、三浦九段は完全シロ

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第三者委員会のシロ判定を受けて、連盟は三浦九段への金銭的な補償について「今後話し合いを進めていく」とするとともに、救済策を示した。

三浦九段は疑惑発覚後、2016年内の出場停止処分を受けている。出場停止で2つの不戦敗が付いているA級順位戦について、連盟は今後も不戦とするが、三浦九段の今期降級はないとする。通常降級は2人だが今期は1人のみ。通常10人のA級は来期11人とし、昇級したばかりで今期10位だった三浦九段は来期11位でスタートする。来期の竜王戦については、トーナメント戦で挑戦権を最も得やすい予選1組とするという。

ただ、これらの救済策で三浦九段が納得するとは到底思えない。

三浦九段に対する救済策には疑問が多い(撮影:今井康一)

A級順位戦は、同じ勝敗であれば順位の低い方が降級の対象となる。来期11位からのスタートでは三浦九段は降級する可能性が最も高いことになる。

出場停止になる前の三浦九段はA級順位戦で1勝3敗だった。敗けが込んでいたとはいえ、渡辺明竜王に勝って波に乗り始めていたところである。それで来期が最下位スタートではあまりに酷ではないか。少なくとも、すでに不戦敗となった2局を除く残り3局は、三浦九段が望むのであれば出場させ、その勝敗を来期の順位に反映するのがフェアなやり方だろう。

竜王戦についても疑問が残る。三浦九段は挑戦権を得ていたのだから、そのことを最大限尊重すべきだ。来期は予選1組からではなく、挑戦者を三浦九段とするか、少なくともトーナメントを勝ち上がった棋士と三浦九段とで優勝決定戦をするくらいでないと、三浦九段の無念は晴らせないだろう。

「シロ」だが出場停止は妥当?

第三者委員会は三浦九段をシロ判定した一方、「出場停止は妥当だ」ともした。「竜王戦の開催が迫っている中、当時の連盟に出場停止以外の選択肢はなかった」とまで断言している。

果たしてそうだろうか。竜王戦は先に4勝した方が竜王を獲得する。最大7局まで争われる竜王戦の開催中に、「『疑惑の挑戦者(仮題)』のようなタイトルの記事」(青野照市専務理事)、すなわち三浦九段の不正を疑う記事が週刊誌に掲載される予定であることが連盟幹部の耳に入っていた。「それでは竜王戦を続けられなくなる」と判断。三浦九段を幹部の集まりに呼んでその旨を告げた」という。

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