トランプ・プーチン、関係親密化は容易でない 世界で矛盾が露呈、両超大国の抱える「火種」

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トランプ氏は「一つの中国」問題を完全に理解していると述べたとはいえ、中台間の微妙な関係を十分理解しているのか疑問である。これは非常に複雑な問題で、現在のことだけを見ても、本当のことは分からない。台湾の国民党政府も中国の共産党政府も、ともに認めてきたという歴史的事情があり、その後台湾の政治状況が大きく変化し、台湾の独立を志向する民進党が台頭したが、そうなると中台関係は決定的に悪化する。米国もそのようなことを望まないから、蔡総統は中台関係の現状維持を目標にしているのだ。

米国はこれまで、「一つの中国」に異論を唱えないとの立場をとってきたが、トランプ氏のように「縛られない」とすると、どうしても否定的なニュアンスになるので、米国のこれまでの立場とは異なる。トランプ発言は中国のみならず、米国としても、また結果的には台湾にとっても問題がある。

一方、ロシアとの関係では、トランプ氏はプーチン大統領をたたえる発言をした。プーチン大統領もトランプ氏の発言に積極的に応えたので、米中関係と異なり、米ロ関係は改善されるという観測が広がった。プーチン大統領とトランプ氏は、今後も電話で連絡を取り合って、会談の日程を調整するそうだ。

シリア政権めぐり、対立し合う米ロ

もっとも、初歩段階でのエールの交換から、実際の関係改善に進めるか。米ロ関係は複雑に絡み合っており、一つの問題で協力できても、ほかに協力困難な問題は多々あり、そう簡単にはいかない。オバマ現政権も発足したばかりのころは、米ロ関係の”リセット”、立て直しを目標に掲げていた。

その意味で、今後の米ロ関係の動向を見るうえで欠かせない、看過できない問題を挙げておく。それは中東だ。

IS(イスラム国)問題の解決を最優先とするトランプ氏だが、そのために米国はロシアと協力すべきだと述べている。だがその中東で、ロシアはシリアのアサド大統領を支援している。もし米ロが協力すれば、多数の市民を殺害するなど非人道的な行為を重ねてきたシリアのアサド政権を排除し反政府勢力を擁護するという、欧米の従来の方針は大きく変更されることになる。米国はシリア現政権とも協力的な関係にならざるをえない。

欧州諸国にとっては、シリア政府の攻撃から逃れてくる、膨大な数の難民への対処も大問題だ。シリア政府寄りになるかもしれないトランプ米新政権に、警戒感を高めているのは、もっともなことである。

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