トヨタ「C-HR」ヒットの裏に透ける二つの不安 ロケットスタートは決まったように見えるが

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クルマの出来は文句ないようだが、日本市場ではキャラクターとして売りにくい部分も(写真はトヨタグローバルニュースルーム提供)

自動車販売店では新車が投入されると、ショールームへの来客や既存客へのアプローチなどがその車種に偏りがちになる。ルーミー&タンクとC-HRがトヨタ系販売店で立て続けに出たことで、セールスマンの戦力が分散されている側面もありそうだ。「ルーミー&タンクのほうが売りやすい」という販売現場の声も聞かれる。

販売現場では初期の需要が一巡した後の失速を懸念する声も聞かれ始めている。指摘されるのは2つの「売りにくさ」。まずは実用性だ。

「子育て世代に勧めるのは厳しい」

別のトヨタ系ディーラー関係者B氏はこう話す。「C-HRはスタイリングを優先したので、とくに後席居住性や積載性能、後方視界が犠牲になっています。お子様が小さい現役子育て世代のお客様におすすめするのは厳しいですね。たとえおすすめしても難色を示されますので、ミニバンやコンパクトMPV(ルーミー&タンク)をおすすめし、そちらで契約をいただくケースも目立っております」。

実用性が重んじられる日本のマーケットでは、趣味性の高い2ドアクーペなどはすでにニーズは限定的なものとなっている。そのなかで「SUVクーペ」的なキャラクターを持つC-HRはSUVでありながら、興味を示す消費者は絞り込まれる。「乗車定員は5名だが実質的にはフロント2名乗車で後席は予備的なイメージの強い使われ方となるでしょうが、せめてそれなりのラゲッジスペースは確保してもらいたい」とも前出の関係者B氏は語ってくれた。

二つ目に指摘される売りにくさは、価格設定などの購入条件である。ハイブリッドを搭載するG(290.52万円)にカーナビとフロアマットをつけ、メーカーウエブサイトの見積りシミュレーションで計算すると、支払い合計は約321万円となった。シミュレーションも含めて、サイトがややわかりにくいこともあり、LEDヘッドライト(約15万円)が計上できなかったので、手計算で加えると合計は約336万円となった。

同様にC-HRと同じくコンパクトSUVのホンダ「ヴェゼル」とマツダ「CX-3」でほぼ同レベルの装備内容を持つグレードを、メーカーサイトのシミュレーションで計算してみると、ヴェゼルは約300万円、割高といわれるCX-3でも約314万円となった。まったく横並びではないものの、これらを比較検討する視点から見ると、C-HRを割高だととらえる客層もいるかもしれない。

ちなみに2016年12月末時点でC-HRの車両本体値引きはゼロ。オプションからの値引きが5万円ぐらいで、あとは下取り車があれば査定額の上乗せなども可能というのが、販売現場でセールスマンから聞いた話だ。ヴェゼルやCX-3は程度の差こそあれ値引き条件はC-HRのようにゼロではないので、実際に購入するとなると競合との価格差は結構開く。値引きも含めた現実的な支払い総額となると、C-HRの割高感はより強くなりそうだ。

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