2017年の中国経済は不安材料に溢れている 持ち直しつつある景気は再び崩れるのか

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その背景には住宅バブル懸念が強まったことがある。住宅価格の動きを見ると、2016年7月には前回高値(2014年4月)を超えてその後も最高値を更新中である 。また、全国70都市平均では前回高値を小幅に(約5%)上回ったに過ぎないが、深圳市では前回高値から約8割上昇、上海市でも約5割上昇するなど巨大都市では住宅バブル懸念が強まっている。

すなわち、成長率目標である"6.5〜7%"の達成が危ぶまれた2016年前半は景気を重視する政策スタンスで臨んだため、住宅バブルの膨張に関しては本格的な対策を講じなかったといえるだろう。

しかし、ここもと政策の重点は景気から住宅バブル退治に移り始めた。2016年10月国慶節連休前後には深圳市や上海市など多くの地方政府が住宅購入規制を強化する方向に動き出した。また、中国人民銀行は、商業銀行17行の幹部および融資担当者などを招集して住宅ローンの管理強化を要請しており、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も、不動産融資を巡るリスク管理を強化する方針を明らかにした。

住宅バブルをこのまま放置すれば、将来に大きな禍根を残すことになりかねないからだ。2016年については、1〜9月の実質成長率が前年同期比6.7%増となり、成長率目標達成がほぼ確実となったため、景気対策に伴うマイナスの側面にも配慮する余裕が生まれたのだ。

2017年は調整が避けられない

景気は持ち直してきたものの、2017年を見渡すと景気に対してマイナスとなる不安材料が目立つ。

第1に前述のように中国政府が住宅バブルの退治に乗り出したことが挙げられる。住宅購入規制を強化し、住宅ローン管理を強化したため、住宅販売への悪影響は避けられないだろう。また、住宅販売の伸びが鈍化すれば新規住宅着工も落ち込む可能性が高い。さらに、家具などの消費にも悪影響が波及するだろう。

第2に小型車減税が半分に縮小される。2015年10月に小型車(排気量1.6L以下)の自動車取得税を10%から5%へ引き下げたことで、2016年の自動車販売は好調だった。しかし、2017年1月以降、その自動車取得税が7.5%へ引き上げられる。本来の10%を基準とすれば小型車減税の延長だとはいえ、2016年に比べれば2.5%分の増税となるためマイナスのインパクトは避けられないだろう。

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