ガソリン高騰でクルマ社会アメリカに変化のうねり

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「ちょっと1日に自転車に乗ったり、歩いたりするだけで、ガソリン代500マイル(約800キロメートル)分が1年で節約できるのよ。健康に良いから、職場に自転車で行ってるわ」と、ナビゲーションシステム大手のトムトムで働くクリスティはいう。筆者は、サンノゼのオーガニック系スーパー・マーケットに行く途中に、ゴルフカートを車代わりに運転しているアメリカ人女性に遭遇した。彼女は「買い物にとても便利。車ほど早くないけど、1ガロン当たり50マイル(1リットル当たり約21キロ)は走るし、それで充分。バッテリーは約4年持つし、交換しても700ドル(約7500円)がかかるだけ。とても経済的よ」。

そのオーガニック店前では、自転車に設置したベビーシートに赤ちゃんを乗せようとしている母親に出会った。買い物袋2つを下に置いていたが、赤ちゃんと大荷物を抱えて自転車に乗る風景は、シリコンバレーでは、あまりなじみがない。その帰りには、高速の横を自転車で走っている米国人男性に出くわした。危険ではないか。そして、わずか数ブロック(街角)先でもアメリカ人家族が「最近は映画を車ではなく、歩いて見に行く」と話す。

 安価なガソリンを求め、会員制流通大手のコスコのガソリンスタンドには長い車の列が並ぶ。「1回の給油すると60ドル台でタンク一杯だったのが、いまや90ドル以上だ。かなわない」と、給油を終えた男性はこぼす。

全米平均で1ガロンの店頭小売価格が3.13ドル(約88円/リットル)だった時の、2月28日の記者会見で、ブッシュ大統領が、「4ドル台になると予想されるガソリン価格で国民が苦しんでいる」という記者の質問に「(4ドル台)なんて聞いたことがないぞ」と答えた。だが、それからガソリン価格は1日に1ガロン当たり約1セント近く上がる勢いで、今週のサンノゼのレギュラーの無鉛ガソリン価格は4.57ドルに達した。約2年前の2005年6月、サンノゼのガソリンスタンドでレギュラーが1ガロン2.25ドルになった時、ガソリンが高騰しすぎと、地元のニュースは騒いだものだ。しかし、今や当時と比較すると、ガソリン価格は2倍になった。さらにさかのぼった、99年3月ころは1ガロン98セントだった(米エネルギー省)。ガソリンの高騰が続き、世界年間ガソリン生産量の約30%を消費する、クルマ社会の米国は今、変わりつつあるようだ。

ガソリン高騰の対策として、庶民はさまざまなアイデアを凝らしている。できるだけカープール(相乗り通勤)する。買い物はまとめて週1度だけ。旅行は控える。通勤は公共交通機関にするといったぐあいだ。ガソリン価格の高騰で、シリコンバレーでは大型車から小型車に乗り換える動きも盛んだ。自動車よりさらに燃費のよいバイクの売れ行きが増加して在庫が無くなったり、BARTやバスなど公共交通機関の利用者も急増中。自転車通勤族が増えてきているため、バイクレーンといわれる自転車専用道の増設も討議され始めている。

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