楽天だけでなく、証券アナリストにもモノ申す グローバルエリートが証券アナリストの実態を論評

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会社もアナリストも予測できない産業も多い

さて、証券会社のレポートに関してだが、企業の業績予測はけっこう適当なことも多いがこれはアナリストだけを責められない。会社側の中期経営計画も多くの場合は外れるわけで、1年先の業績も見通すのが難しい産業は多い。

たとえば楽天でいうと、Eコマース事業は会員数推移などが業績に連動するためまだ予測ができるとしても、もうひとつの柱である金融事業などは銀行や証券などそのときの株価水準や市場動向で大きく変わるため、業績予測はほぼ不可能なビジネスといえるかもしれない。これは野村証券など証券会社の数年後の業績予想などしょせんできないことに共通している。

会社も自社の業績を予測できない中、いくつかのありうるシナリオを特定して、各シナリオが実現する確率を計算し(暇な人はモンテカルロシュミレーションなどを駆使して)、加重平均で株価を算定する理論もあるのだが、実際には苦労して作業量が多い割に株価や業績の予測にはほぼつながらない。

ただし会社側は決算短信などで業績予測を出さなければならないので(楽天は出してないのだが)とにかく予想値を出すのだが、これも社内にはっぱをかけるための努力ベースだったり、確固たる予測に基づいた積み上げベースだったり、間違っても外さないようとんでもなく控えめに出してきて毎年“予定調和的に”上方修正する会社があったり、と業績予想値が当てにならないことも多い。

複雑すぎるモデルは株価判断の役に立たない

こういったとき、株価予想モデルはモデルをつくるためのモデルになってしまっていたりする。投資調査プロセスを過度に重視する運用会社の場合、多大な時間をかけて巨大なモデルをつくる割に、業績予測力や株価予測力が一切ないモデルを喜々として作ってしまっているところも多い。業界にいる人は同意するだろうが、適性に乏しいオタッキーな調査部長がいると、(その調査部長による)株価は当たらないくせに、的外れな分析ばかり要求してきて、嫌になった優秀なアナリストから順番に辞めていく。

なお、モデルが株価を当てるためというより、ファンドを顧客に売るときのマーケティングマテリアルで「弊社はこんなに徹底した調査をしています」というのをアピールするためだけに作っているのでは、というモデルも存在する。

ちなみにここだけの話、実際に高い業績を上げている運用会社やヘッジファンドで、モデルなどほぼ作っていない会社も多い(ただし何を聞いても細かいデータと共に答えてくれるアナリストは、株価の当たり外れは別として重宝されるので、この路線で価値を出すアナリストの方に文句を言っているわけではない)。

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